Life in Berkeley アメリカ大学院留学記

2021年からUCBのPh.D.課程にて研究留学中 <進学準備、研究生活、日常生活を紹介します>

コロナ禍での留学 Part1 (2021年1月に渡米)

タイトルの通り、私は先日無事に渡米することができました。コロナ禍でも仕事の都合などで止むを得ず渡米しなくてはいけない方、また新型コロナウイルスがいつ終息するのかわからない中で留学の開始時期を悩んでいる人がいるのではないかと思います。

今回はそのような方のために、私がどうしてコロナ禍の真っ只中で渡米する決断をしたのか、また渡米するときの空港や飛行機の様子、安全性はどうだったのかについてお伝えしたいと思います。

1. はじめに

この記事をお読みになられている方は、コロナ禍での渡米を予定されている方や検討されている方が多いかと思います。私自身はコロナ禍の2021年1月に渡米をしましたが、これは私個人の経験でしかなく、必ずしも全ての人がこの状況下で渡航ができるわけではありません。

また、この記事はコロナ禍でも渡米できる/渡米しても大丈夫ということを伝えるためのものではなく、この状況をどう捉えて、渡米をするのかどうか、ご自分の責任で検討・判断をしていただく上での参考材料になればと考え、記載しています。

2. アメリカのコロナの感染状況

まず、日々報道されているためご存知だとは思いますが、世界各国での新型コロナウイルスの感染状況と日本・アメリカでの感染状況についてです。

米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、世界全体の累計感染者数は1月22日午後7時30分時点で9756.8万人です。その中でも最も深刻なのがアメリカで、アメリカでは累計感染者数が2353万人と世界全体の感染者数の約25%をも占めており、連日20万人前後のペースで感染者が増え続けています

2021年の年明け以降、日本国内においても感染者数が増加し、2021年1月23日現在、日本では新たに確認された新型コロナウイルス感染者が4714人で、そのうち1070人が東京での感染者数と報告されています。そして、東京では1月13日から11日連続で1000人以上の感染者か確認されており、日本政府は1月8日に2度目となる緊急事態宣言を発令しました。

これらからわかることは、確かに日本でもここ最近新型コロナウイルスの感染者数が再び増加しており、状況が悪化してきていますが、それでもアメリカの感染者数とは比べ物にもならないくらい少ないということです。

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https://covid19.who.int/

こちらの写真は1月23日現在の世界各国での100万人あたりの感染者数を提示したWHOの発表しているデータになります。色の濃いところほど感染者数が多くなっています。

人口が違うため、日本と比較してアメリカの方が感染者数が多くなるのは当然ですが、やはり100万人あたりの感染者数を見てみても、アメリカ・ヨーロッパにおいて感染者数が増加していることがわかります。

よって、何がなんでも今留学したいと考えるのではなく、このような渡米に伴うリスクについて十分に検討する必要があります。

3. コロナ禍で留学はできるの?
 ▶︎各国の渡航制限

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、現在各国で入国時の検疫の強化(健康申告書等の提出、隔離措置)や入国、ビザ発給の制限が行われています。各国の対応は流動的なため、予告なしに入国制限が実施されることも予想されます。

渡航先の国がビザ発給や入国の制限をしていないかどうか、都度最新情報の確認に努めてください。

 ▶︎アメリカの渡航制限

ここでは、2021年1月23日現在のアメリカの受け入れ態勢について提示します。アメリカでは州ごとにアメリカへの入国者に対する要求が異なりますので、必ず自分の渡航先の最新情報を確認することが必要です。

私は2021年1月12日にサンフランシスコ国際空港から入国したのですが、その時点では米国入国者が求められていたのは入国後の二週間の自己隔離のみで、空港到着後も特に自己隔離の必要性などのアナウンスはありませんでした。しかし、1月26日からは入国要件に変更があります。以下は外務省のホームページからの抜粋です。

新型コロナウイルスの変異種の拡大防止等のため、1月26日以降に空路で米国に入国する全ての旅客に対し、米国への出発前3日以内にウイルス検査を受け、米国行きフライトに搭乗する前に航空会社に、陰性の検査結果を提示すること、誓約書(Attestation)を提出すること等を命じ、これを米国入国の要件としました。(出典:外務省海外安全ホームページ

このように、ほんの少しの期間であっても入国時の要件に違いが生じる可能性があります。今後渡航を予定・計画される方は十分に最新の情報を確認し、『検査結果が必要なのに忘れていた!』というようなことがないよう、お気をつけください。

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 ▶︎交換留学の場合

続いて、コロナ禍で留学ができるのかを条件別に紹介します。まずは日本の大学に正規生として在籍し、提携している海外の大学に約1年間留学するという一般的な交換留学の場合です。

私の出身大学は非常に交換留学制度が発展しており、毎年多くの学生が世界各国に交換留学に行くのですが、2020年度は残念なことに多くの交換留学プログラムが中止になったということを耳にしています。(私の知る限りでは2020年に交換留学にいけたという話は聞いていないのですが、もしかしたら中には留学ができた人もいるのかもしれません。)

2020度のプログラムの中止を受けて、留学を予定していた学生たちの中には留学を諦め就職活動をする人やオンラインで留学をする人、2021年度のプログラムへの再応募を決意した人等、様々であったようですが、未だコロナが終息していない中、2021年度の交換留学プログラムも参加できるのかどうか不安に思っている人が多いと思います。

結論から言ってしまうと、2021年度も交換留学はコロナが終息しない限りは難しいと考えられます。というのも、交換留学は日本の大学の正規生として留学をするので、学生個人の責任だけではなく、大学側も責任があるためです。そのため、海外へ安全に渡航できるという状況にならない限りは交換留学は許可されない可能性が高いと考えられます。

海外へ安全に渡航できる状況下どうかの指標の一つとしては、外務省の提示している国・地域別の海外安全情報というものがあります。こちらを見るとわかるように2021年1月現在、日本政府は全ての国と地域を"レベル2:不要不急の渡航は止めてください"以上に設定しています。交換留学が許可される場合にはこれがレベル1に引き下げられる必要があると思われます。(※交換留学の許可が下りるかどうかは学校ごとに基準が異なりますので、在籍している大学に確認してください。)

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 ▶︎正規進学の場合

続いて、海外の大学や大学院に留学ではなく正規の学生として入学/編入する場合についてです。先ほど、コロナ禍においては交換留学は難しいという説明をしましたが、正規進学の場合はコロナ禍においても渡航できる可能性が高くなります実際に私もアメリカの大学院に正規進学という形で、コロナ禍に渡米をしています。

交換留学の場合と比較して正規進学の方が渡航できる可能性が高い最大の理由は、渡航に伴う危険性への責任が学生個人にあるからです。正規進学では交換留学とは異なり日本で在籍している学校がないために、例え現在のアメリカのように"レベル3:渡航中止勧告"が発令されているであっても、VISAが降りて渡航先での滞在要件を満たしている場合には渡航できる可能性があります。

VISAと渡航先での滞在要件については次の"3. 私の場合"の項目で紹介します。

 4. 私の場合(UC BerkeleyのSpring 2021入学) 

私の場合、コロナ禍での渡米準備として大変だったのがVISAの発給と渡航先での滞在要件を満たしているかの確認でした。

 ▶︎VISAについて

まず、学生VISAにはF-1もしくはJ-1という種類があり、アメリカ大使館にて発給してもらうことができます。しかし、VISAの発給にあたりI-20 (F-1の場合)もしくはDS2019(J-1の場合)という書類が必要で、これは各大学に請求して郵送してもらう必要があります。そして、VISA申請に必要な書類が揃ったら、大使館での対面のVISA面接を行う必要があります。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、アメリカ大使館でのVISA面接は2020年3月19日より停止されていましたが、2020年7月16日より大阪・福岡・札幌の米国領事館が、9月9日より東京米国大使館が限られた数の学生VISAのVISA面接を再開しました。そのため、私の場合は当初は2020年の8月の渡米を予定していたのですが、VISAが得られなかったことから、渡米を延期することになりました。

一応、アメリカ領事館/大使館の緊急面接予約リクエストという制度を利用することで2020年の8月の渡米予定を変更せずに決行しようと思えばできたのですが、コロナ禍で先行きが不安な中で渡米を決行するのは危険と考えて見送りました。

緊急面接予約リクエストというのはI-20またはDS2019に記載された参加プログラムの開始日が30日以内で、一般面接枠に空きがない学生または交流訪問者がリクエストすることができるという制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

 ▶︎DHSの米国滞在要件

続いて、VISAは取れたものの、渡航後に自分が米国で滞在するためのVISA要件を満たしているかどうかの確認に時間がかかりました。

ここで重要なのが、VISAが取得できただけではコロナ禍では留学/進学ができるという保証はないということです。

その理由は授業のリモート化にあります。取得した学生VISAで入国し、米国に滞在する際にはDHS (United States Department of Homeland Security: アメリカ合衆国国土安全保障省)の発表するガイダンスに従い、DHSの提示する滞在要件を満たしていなくてはなりません。DHSは2021年の春学期に学生ビザで米国に滞在する学生に対し、次の要件を提示しています。

  • 対面式で行われる授業を少なくとも1つ受講すること

そして、DHSのガイダンスに基づいて大学側からは以下の案内がありました。

  • 2020年3月9日以降に米国に入国した/する予定の学生は対面授業を最低1つ履修すること
  • 現在米国外にいて、2021年春に米国に入国する予定の場合、(対面授業を登録していたとしても)新型コロナウイルスの感染状況により対面式の授業が行えなくなった場合、米国への入国/滞在が合法的に認められるかどうか不明である
  • 学期開始後の最初の2週間は全授業をオンラインで行うため、それが原因となって入国を拒否される可能性がある
  • もし、入国後、新型コロナウイルスの感染状況により当初の授業モデルが変更され対面授業がなくなった場合、それではDHSの求める滞在要件を満たせないため、そのことが将来VISAを申請する際に悪影響を及ぼすリスクがある
  • これらの不確実性を十分に考慮して、2021年春学期に入学するために米国に入国するという決定について慎重に検討することを求める

原文はこちらから確認できます

Important message regarding Spring 2021 enrollment requirements

 ▶︎私が渡米を決断した理由

私の場合はこのような状況を考慮した上で、次の理由から渡米を決断するに至りました。

  • 通常はPh.D.1〜2年目はコースワーク中心となるが、私のプログラムは最初から研究中心でほとんどの時間を研究室での研究に費やすため、リモートで履修しなくてはいけない授業がほとんどなく、コロナが終息するまで日本国内からリモートで大学院の授業を履修するという選択肢がない
  • 私のプログラムは生物系で研究メインのために、現地に行かない限り何もできない(情報科学分野の人などは日本国内からでもアメリカの大学院での研究が可能だと思います、羨ましい...)
  • 研究室での研究を単位として登録することから、研究活動が行える限りは米国での滞在要件を満たすことができる(大学は基本的には閉まっていますが、研究者や大学院生は入校が許可されており、2020年6月から研究室は完全に再開したらしい)
  • Ph.D.プログラムは最低でも卒業までに5年はかかることから、いつになるのかわからない新型コロナウイルスの終息を待っている余裕がない

5. まとめ

この記事でお伝えしたのは以下の3点です。(2021年1月現在の情報です)

  • 交換留学はコロナが終息するまでは難しいと思われるが、正規生として現地の大学/大学院に入学するのであれば渡航に伴う責任は自己責任となるので渡航できる可能性がある
  • コロナ禍においては、VISAが取得できただけでは留学/進学ができるという保証はない(DHSの求める滞在要件を満たす必要がある!)
  • 対面式の授業を履修することでDHSの米国滞在要件を満たすことができるが、対面式授業が確実に行われるという保証はないことから、渡米後に要件を満たせなくなり、VISAのステータスが傷つくリスクがある

6. 最後に

コロナ禍では色々と不明瞭な点も多く、今回紹介した私の経験談が必ずしも全ての人に当てはまるわけではありません。今後渡米を予定/検討している方は必ずご自分の場合について大学側と直接コンタクトを取って確認するようにしてください。

そして、私自身は先日渡米をしましたが、正直この時期の渡米はあまりお勧めはしません。今現在、アメリカは新型コロナウイルスの感染状況や政治的な問題等、国家の情勢としてはあまりよくない状況が続いています。

せっかく渡米をしても週末に遊びへ出かけたり、(レストランはテイクアウトのみの営業のため)友人と食事に行ったりといったことはできず(授業が全てオンラインのため)なかなか友達も作れず、一般的にイメージされるような留学ライフというのはかけ離れていると思います。私の場合は研究をするという目的で渡米してきているので、このような環境でも後悔はしていませんが、留学の醍醐味として現地での交流や生活を体験したいと考えている人にはあまり良くない状況だと感じます。

 

コロナによって留学を中止したり、延期したりしなくてはいけなくなったり、様々な状況に見舞われている人がいると思いますが、それぞれにとって良い選択肢が見つかるように願っています。

次の記事ではコロナ禍での渡米に関して空港・機内での様子、入国審査等の詳細を記しますので、よろしければお読みください。