コロナ禍での留学〜渡米後1ヶ月経過〜
アメリカに来てから1ヶ月が経ちました。しかし、まだ1ヶ月なの?という感じです。
今日はこの1ヶ月の生活について、自分用の記録も兼ねて、コロナ禍での留学生活の現状をテーマに書きます。私一個人の生活の変化になるので一例でしかありませんが、コロナ禍での留学を検討中の人、興味がある人の参考になればと思います。
1. はじめに
まず、コロナ禍でいろいろ制限されている中で渡米をしても、意味がないんじゃないか?と思われる人もいるかと思うのですが、それについては"何を目的として渡米/留学するのか"によって答えが変わると思います。結論から言うと、私はアメリカの大学院で研究をすることを最大の目的に渡米しているため、コロナ禍であっても渡米できて本当に良かったと思っているし、渡米して1ヶ月がたった今もこの選択に間違いはなかったと思っています。
しかし、以前”コロナ禍での留学”の記事内でも書いたように、交換留学などで勉強だけでなく、現地での生活や体験、人との繋がり・交流なども目的として海外に行きたいという思いがある場合には、コロナ禍で留学をしても思うような充実した留学生活を送ることは難しいのではないかな、、と思います。
そのため、この記事内で紹介する日常生活というのは日常のほとんどを研究室で過ごしているので、日常生活≒研究生活となっている点にご注意ください。
2. 日本とアメリカでのコロナ禍の生活比較
私は当初2020年8月に渡米/入学(秋入学)を予定していたのですが、コロナのせいでVISAの取得が遅れ、渡米を見送ることとなりました。そのため、日本で色々な活動が制限されながら、いつになったら渡米できるのかわからない不安な毎日を送っていたのと比較して、渡米してからは毎日新しいことがあるせいなのか、気分的には3ヶ月は経過しているという感じです。笑
このように書くと、アメリカでの生活を満喫しているかのように聞こえるかと思うのですが...でも実際には、アメリカでは日本よりもずっとコロナ禍での生活が制限されています。
例えばレストランはテイクアウトしか営業していないし、市役所や図書館などの公共施設もappointment onlyで基本的に全部閉まっているのでとても不便だし、研究室とハウスメイト以外に新しい友達もできません。
研究室が休みの週末も特にどこかに遊びに行けるわけではないので、スーパーに週1回の買い出しに行って、料理を作り置きして、ルームメイトと一緒にお菓子作りをする(これが唯一の楽しみ)、という決まった流れになっています。
なので、アメリカに来たからといって何か楽しいことがあるわけではなく、日本にいた時と同じで、毎日研究室と家の往復をしているだけという点では基本的には変わっていません。むしろ、渡米前に日本にいた時の方がしばらく友達に会えなくなるからという理由で色々な友達と会ったりご飯を食べたりしていたので、そういうのが何もできないのはちょっと残念です。。
まあでも、交換留学で渡米していた時だったら、今の生活は、新しい友達ができない/アメリカ国内旅行ができない/オンライン授業しかなくて渡米した意味がない等、不平不満だらけになりそうですが、研究室で毎日研究ができるという環境があるだけで大満足です。それに、毎日割と忙しくて遊ぶ暇がないので、コロナが終息しても今とあまり変わらない生活になる気がします。笑
でもやはり毎日新しい刺激があるというだけで日々の生活に対するモチベーションは随分と変化することに気がつきました。特にこの1ヶ月はアメリカにきて最初の1ヶ月だったので、生活の立ち上げのためにアメリカの銀行口座やクレジットカードの作成、SSN(ソーシャルセキュリティーナンバー)の取得など、いろいろとやらなくてはいけないことがありました。どれも以前交換留学できていたときにはやった頃がないものであったのに加え、コロナのせいで全てアポを取らないといけないのに、サービスが悪くてなかなか電話が繋がらなかったり...と、面倒な手続きが沢山あったのですが、いろいろと学ぶことも多かったです。
アメリカはいろいろと言ったもん勝ちという風潮があるので、ここでの生活を良いものにするためにアメリカのいろいろな制度について勉強したり、情報収集をしたり、交渉をうまく行ってより賢く生きなければと思いました。
3. アメリカでの研究生活
そして、肝心の研究生活についてですが、週5で(たまに土曜日も)朝から夜まで研究室にいっています。コロナ禍なので研究室に行く時間帯を分散させたりしているのかな、と思ったのですが、研究室を2室持っているので全員が来ても各部屋の定員を超えないということらしく、特に時間制限もされていません。ただ、私たち大学院生やポスドクは研究室でしか研究をすることができないので大学からessential worker扱いされているのに対し、PI(Principal Investigator, 研究室のリーダー/トップ)は家で働けるということでコロナになってから一度も大学に来ていないそうです。つまり、私もzoom越しにしか会っていないという...笑
この最初の1ヶ月は、私はアメリカに来てから研究対象が微生物からマウスに代わり、微生物遺伝学から老化研究へと研究テーマも全く新しい分野になったため、毎日学ぶことだらけで周りの学生の会話についていくのに精一杯でした。しかし、あまりそのギャップを理解されていない?笑 のか、マウスに触ったこともなければ飼育方法も知らないのに、いきなり"マウスが35匹必要だから後どれだけケージを増やしたらいいか考えて"というメールが送られてきたり、一度も解剖をしたこともないのに脳のスライスの作成をするように言われたり、、。
仕方ないので、過去の実験ノートからデータを漁ってノックアウトマウスの生まれる確率を計算してケージについて回答したら、答えはOK. Please set up the cages ASAP.だけ笑 流石にいきなり脳のスライスは作れないので、冷凍庫にある古い脳を使って練習してからデータにする重要なマウスのスライスに取り掛かると回答したら理解してもらえました。しかも、PIはラボに来ていないせいで昼夜関係なくメールで何でも連絡してくるし、みんなの返信も5分以内とすごく早いので、私も常に通知が来たらメールを読んですぐに返信するようになりました。
また、毎週金曜日にはPIとの個人ミーティングとゼミ+ジャーナルクラブがあるのですが、入ったばかりでまだほとんど何もできていないのに、個人ミーティングでは必ず”今週は何をやって、何ができるようになって、来週は何をする予定なのか”ということを聞かれるし、ジャーナルクラブでは毎週自分の研究テーマにあっていてしかも超最新(1週間以内くらい)でインパクトファクターが高めの論文を紹介する方がいい(≒しないといけない)ので、なかなか大変です。
特に、日本の場合だと新入生は受け身でいてもオリエンテーションなどやらなくてはいけないことがどんどん指示されるように思うのですが、ここでは研究室のマニュアルや実験プロトコルの入ったGoogle Driveが最初に共有されただけで、どのオリエンテーションやトレーニングを受けなくてはいけないのかといった案内はされないので自分で調べて必要なものを予約して受けにいっていました。そして、ポスドクの学生がSupervisorになってくれているのですが、実験技術の習得のためのトレーニングをしてくれるというよりは彼女がやっている実験を横で見て観察するという形なので、彼女の毎週の実験予定を予め聞いて必要なプロトコルをダウンロードして予習をし、実験の様子を観察しながらわからないことを都度質問して、私も練習したいと積極的に言うようにしています。
こう書くと、上記のコメント/感想は不満を述べているように聞こえたかもしれないのですが、なかなか最初から求められるものが多くてついて行くのが大変だな〜という感想をそのまま述べただけです。寧ろ最初から簡単についていけるようでは面白くないので、そういう意味では期待を裏切らない環境で満足しています。そして、受け身で待っていても教えてもらえることはほとんどないですが、自分で積極的に質問すれば嫌な顔せず教えてくれるし、何かお願いをすれば動いてくれる人が多いので、そういう意味では指導がされていないのではなく、自分から動いて指導を請うというのがここでの当たり前なんだなと思います。(そして、自分が指導する立場になった時には私もそうなっているんだと思います笑)
4. 渡米後の1ヶ月にやったこと
最後に、この1ヶ月のハイライトをまとめてみます。まず、渡米後の最初の2週間は自己隔離期間だったので、キャンパス/ラボには行くことができなかったのですが、その間にも研究でマウスを使用するということもありオンラインで受講しなくてはいけない講座(動物実験、マウスの扱い方、安全講習など)が沢山ありました。3日くらいで終わるかなと思っていたのですが全然終わらず、しかも動物実験の許可が下りるのに時間がかかるのでさっさと講習を終了するように言われ、昼夜関係なくずっと講習を受けていました。
それと同時に、今年(2021年)の3月卒業予定の日本の大学の修士課程に在籍していてダブルスクールをやっている状態になっているので、その授業の録画を聞いたり課題をやったり、さらに修士論文のディフェンスもzoomで行いました。とりあえず、ディフェンスをパスできたので、あとは残りの課題を終わらせて、3月になったら卒業する予定です。
バークレーでは、オリエンテーションが全て終わり、animal facilityへのアクセスができるようになったので、これまでポスドクの人と一緒に行っていたマウスの管理も自分で行うようになると思います。実験技術としては、まずマウスのgenotypingを習得し、perfusion(灌流固定)の練習中です。マウスをやっていない人には何のことやらという感じだと思いますが、とりあえず、今月の研究での1番の進歩はマウスを使った実験ができたということです。ここにくるまで一度もマウスに触ったことがなく、小学生の頃に自分の脈拍を測って気分が悪くなり失神したことがあるので、マウスを使う実験がすごく不安だったのですが、実験を失敗しないように気をつけなきゃということに気を取られていたら、マウスを気持ち悪いとか考える暇もなく終わっていました。
実験でマウスを使うのは問題なくできたとは言え、動物実験については色々と世間の反対意見や私自身の考えもあるので、それも含めて実験で学んだことについても後日書きたいと思っています。
5. 最後に
基本的に、私は暇でやることがないよりも予定が詰まっている状態の方が好きなので、今の状態はやることも勉強することも多くて大変だけど自分としては非常に満足している状態です。しかし、この記事では詳しくは書きませんが、卒論や修論のための研究をしていた時は心が折れかけて(病みかけて?笑)1週間くらい部屋から出られなくなったこともありました。(どうやってそのような状態から立ち直ったのか、安定した研究生活を送るためにはどうしたらいいのか、これまでに研究を通して学んだ、研究の難しさ・面白さについては別の記事で紹介しようと思うので、興味があったら見てください)
この1ヶ月は何もかもが真新しくて面白いという状態でしたが、この先研究をしていく中で、どうしても行き詰ったり、マンネリ化してきてモチベーションを保つことに苦労することもあると思うので、今の研究にワクワクしている初心を忘れないように、適度な息抜きも大切にしてこの先も頑張りたいと思います。