Life in Berkeley アメリカ大学院留学記

2021年からUCBのPh.D.課程にて研究留学中 <進学準備、研究生活、日常生活を紹介します>

研究室・教授とのコネクションの作り方

ここ最近は進路選択についての記事を書いていたのですが、今日はアメリカの大学院に出願するときに重要となる、研究室・教授とのコネクションの作り方について、体験談をもとにアドバイスをしたいと思います。

この記事ではコネクションを作る手順として行うべきことを以下のように順を追って説明していきます。

もちろん、これら全ての手順を行わなくてはコネクションが作れないというわけではありません。しかし、ここに挙げたステップは後半になるにつれて難易度はどんどん上がるものの、それらを行えば行うほど、強力なコネクションを得ることができるため、なるべく色々と挑戦してみることをおすすめします!

f:id:c201233w:20210301135939p:plain

1. 情報収集

まず、これはコネクションを作る以前に、アメリカの大学院に出願すると決めてから最初に行うべきことではありますが、各大学院のホームページを隈なく見て、自分の興味のあるプログラム・研究室を見つけるということが最初のステップです。多くの大学院では(例えば生物学の場合、)細胞生物学、微生物学というように大きな括りでプログラムが存在していて、そのプログラム内に研究分野が多岐に渡る複数の研究室が存在しているという形をとっています。そのため、同じプログラムに所属している研究室であっても自分が興味のある研究室もあれば、あまり現時点では興味のない研究室もあると思います。

なので、大学院のホームページから興味のあるプログラムを見つけるだけでなく、そのプログラムのホームページから各研究室のWebページへ飛んで詳細に調べることが重要です。そして、About ResearchやCurrent studentといった情報をみることにより、その研究室がこれまでにどのような研究を行ってきて、どのような功績を残し(論文発表)、今現在どのような研究を行っているのか、またラボメンバーの構成はどんなか、といった情報を集めることにより、その研究室の大まかなイメージを掴むことができます。

私の場合は、大学院のホームページから興味のあるプログラムを見つけ、その中に面白そうな研究を行っている研究室を見つけたら、その都度、大学院名・プログラム名・研究室の教授名・研究内容・連絡先(メールアドレス)といった情報をエクセルに記録し、一番上に自分の最も興味のある研究室が含まれるプログラムが来るように、常にランクを変動させながらまとめていきました。

⇩一部公開するとこんな感じです

f:id:c201233w:20210301094251p:plain

なかなか、数ある大学院の中からプログラムを見つけて、そのプログラムに含まれる研究室一つ一つを吟味しながら自分の興味のあるものを抽出していく、という作業は時間がかかると多います。しかし、ここを適当にやってしまうと、その次のステップでせっかくメールの返信が返ってきたり、研究室訪問をする機会が得られたとしても、思っていたのと違った、あまり興味がないかもしれないといったことに繋がりかねません。さらには、このようにリストの作成をしておくと、奨学金の応募の際に出願校の一覧を求められることもあるため、後々役に立ちます。

また、アメリカの大学院の特徴として、研究分野が多岐に渡る研究室が一つのプログラムに多く含まれているため、学生は入学後にこれらの研究室を数ヶ月ずつ回るというラボローテーションの機会を得ることができます。そのため特に興味のある研究室が一つだけ存在しているプログラムというよりは、自分の興味・関心にあった魅力的な研究を行っている研究室が複数存在しているプログラムを見つけることができると、入学後にそれらの研究室を実際に比較して、自分に最もフィットしていると感じる研究室を選択できるという魅力もあります。(ちなみに、私の場合は研究室を指定してのdirect admissionだったためラボローテーションはやっていませんが笑)

2. メール作成 

興味のあるプログラム・研究室が決まったら、次に行うことは実際にメールを送ってコンタクトを取ることです。

では、メールには具体的に何を書けばいいのかということを悩むかもしれませんが、何が正解というのはないと思いますが、以下に私が書いた内容を上げておくので参考までに。

・自分の現在の所属 (当時は交換留学中だったのでそのことも)

・自分の興味のある研究分野とその理由

・その研究室で行われている研究のどこに魅力を感じるのか (発表されている論文等を読んでおく)

・来年度の募集は行っているか? (募集していないこともあるので確認する)

・研究室訪問をしても良いか?

・CV

しかしながら、コンタクト一つ取るのも簡単ではないのです。考えてもらえばわかるように、これらのトップレベルの大学に所属する大学教授はこのようなメールを世界中の学生から毎日何十通も受け取っているわけであり、出どころのよくわからない海外からの学生のメールにいちいち返信したりはしてくれません。そのため、返信が来なくてもめげないでください

私自身もメール自体は20通ほど送りましたが、返信が来たのは5通でした。返信の内訳も、特に興味を持ってくれた教授が1人(現在のPI)、質問ができるようにと所属する大学院生と繋いでくれた教授が1人、私が興味を持っているといったプロジェクトについて詳しく説明し出願するのを楽しみにしているといってくれた教授が1人、今年度は募集をしていないという内容が2人でした。。笑

では、少しでも返信率を上げるにはどうしたら良いのでしょうか?まず大事なのは、本当にその研究室の研究内容に興味があるという自分の思いを伝えることです。そのためには、何通ものメールを送るというのは時間も労力もかかりますが、それでもテンプレートに従って同じ内容をコピペして送るのではなく、きちんと論文を読んだり研究室に関する情報を収集した上で、どうしてその研究室が良いのかという理由を明確にするということが有効であると思います。また、自分が興味があるというだけでなく、相手の興味も惹きつけるために、自分がどのような価値を提供できるのかということもCV等を使ってアピールすることが大切です。

そして、このようなメールを書くうえで注意した方が良いのは、メールは短く簡潔にパッと見て内容が伝わるように書く、かつ自分の個性が伝わるように書くということです。

これはメールに限らず、奨学金応募の際などにも言えることですが、ただ自分の思いをぶつけるのではなく、相手が返信をしたいな、面白そうな学生だからちょっと話してみたいな、と思ってもらえるように意識しながら書くことが大事だと私は考えています。

 

f:id:c201233w:20210301132613p:plain
f:id:c201233w:20210301132912p:plain

3. Skype・Zoom等のミーティング

さて、それではメールでのコンタクトが取れたら次に行うべきことは、実際に会話をすることで距離を縮めるということです。もちろん、いきなりメールで研究室訪問の依頼をし、アポイントをとっても良いのですが、日本から研究室を訪問するのは金銭的・日程的にもすぐには難しかったり、また仮に交換留学等で既にアメリカにいたとしても飛行機に乗ってすぐに会いにいくというのは難しいかもしれません。

そのため、メールでのコンタクトが取れたタイミングで、忘れられてしまわないうちにSkypeやZoom等のオンラインツールを活用して、教授と顔を合わせて話をするという機会を設けることが有効です。私の場合は、教授の方からSkypeで話をしようという風に連絡をいただきましたが、そのように言ってもらえなかったとしても、”研究室を訪問したいが、すぐには日程調整ができないため、まずオンラインで話す機会をいただけないか”などとお願いをすることで、せっかく取れたコンタクトを無駄にしてしまわないように自分から積極的に動いて働きかけることが大事です。

4. 研究室訪問

続いて、実際にメールでのコンタクトが取れ、(ビデオ)電話等をすることで自分の存在を認識してもらうことができたら、日程を調整して実際に研究室訪問をしてみると良いでしょう。

研究室一つだけを訪問するためにわざわざアメリカを訪れるというのはあまり現実的でないと思うので、一回の訪問で複数の研究室を回ることができるようにプランを組むことができると良いと思います。また、教授と会うだけではなく、その研究室の大学院生やポスドク(入学したら共に研究をする仲間)と話したり、タイミングが合えばラボミーティングに参加したりとやれそうなことは積極的にやってみると良いと思います。

さらに、実際にそこに入学するとなったらその街に住むことになるので、街の様子や雰囲気を観察したり、また誰かの紹介等でその大学に通う日本人学生とコンタクトを取ることができたら実際に会ってみるなど、少しでも海外進学の実現に役立ちそうなことがあれば何でもやってみる事が大事だと思います。(大体どこの大学もFacebookに日本人コミュニティーがあるのでそういうのを覗いてみるといいかも??)

f:id:c201233w:20210301133335p:plain
f:id:c201233w:20210301133455p:plain

5. 研究体験をさせてもらう(研究機会を得る)

先ほど、研究室訪問について複数を一回で回れるように計画すると良いとアドバイスをしましたが、実は私自身はそのような研究室訪問は行っていないのです。

私も当初は交換留学終了後、コンタクトの取れている研究室を回ってから帰国しようと計画していたのですが、なんとUC Berkeleyの教授(現在のPI)とSkypeで話をする中で、幸運なことに、”せっかく今アメリカにいるのなら交換留学プログラム終了後に1ヶ月くらい研究室に滞在し研究の手伝いをしてみたら?”という話をいただき、こんなチャンスはそうないと考えて、その場でやりたいと返事をしました。そのため、日本への帰国便を変更し、2週間後には切れる予定だったVISAの延長手続きをして(本来なら時間のかかる手続きなのに3日で何とか終わらせてすごく大変だった)、Berkeleyで1ヶ月住む家を探し、、と急遽予定を大きく変更し、UC Berkleyでの研究室訪問&1ヶ月滞在をしたために、それ以外の研究室を訪問することはできませんでした。

しかし、私自身は一カ月間の研究体験を通して、そこの研究室の人と話をしたり、実験をしたり、ラボミーティングに参加してジャーナル紹介をしてみたりと、研究への理解を深めることができたことにより、実際にその研究室に入った場合の研究生活を具体的に体感することができ、ここでもっと研究してみたい、ここに入りたいと心から惹かれ、この研究室を第一志望にすることを決めたため、私にとってはこの形が良かったのだと思っています。

また、私は交換留学先でのUC Riversideではあまり興味のある研究室に出会えず研究室には所属しなかったのですが、交換留学をしている/する予定という人は留学先で研究室に所属するのも手っ取り早くコネクションを作る事ができるためオススメです。

教授とのコンタクトが取れるかどうか、研究室訪問や研究機会を得る事ができるかどうか、というのは運もあり、一概にこの方法がベストというのは言えません。しかし、これはチャンスだと思った時にすぐに動けるようにしておく事、そのチャンスを絶対につかもうと思う気持ち・意欲を見せる事ができれば、きっと良い方向に導かれると思います。

f:id:c201233w:20210227221220p:plain
f:id:c201233w:20210301134230p:plain

6. 推薦状の依頼

最後に、ここまで来る事ができたら、かなり強いコネクションを築き上げる事ができていると個人的には感じますが、推薦状までいただく事ができたらなお良いでしょう。

5.に書いたような研究経験をする機会がある人は、きっと滞在中に何度か教授と一対一で話すチャンスがあると思います(なかったら自分で作る!笑)。私の場合は、毎週金曜日の個人ミーティングがそうだったのですが、正規生ではないにも関わらず他の学生と同じように、私もその週に何を学んだのかということ話す時間をとっていただいていました。また、特に私は帰国後に出願を控えていたため、出願プロセスについても直接アドバイスをいただいたり、奨学金や出願の際に必要な推薦状を書いてあげるから持ってくるようにということも言われました。

正直、1ヶ月やそこらでは何か研究実績が残せるわけではないし、私という人間についてもすごく深く知ってもらえたというわけではありませんでしたが、推薦状には私のこれまでの行動力を高く評価し、1ヶ月みていただけでも今後研究においてそれを発揮するポテンシャルがあると確信しているという内容を書いていただくことができました。交換留学等で長期間滞在していた研究室の教授であれば、推薦状を依頼することもできると思っていたのですが、まさか1ヶ月という短い期間で推薦状までいただけるとは思ってもおらず、少しびっくりした&嬉しかったのを覚えています。

でも、なぜ、教授がここまで積極的にサポートをしてくれたのでしょうか?もちろんこんな学生が欲しいな、と興味を持ってもらっていることが前提ですが、私は興味を持った学生に対しては色々と入学のサポートを手厚くしてくれる教授が多いのではないか思っています。というのも、学生が入学時に奨学金を獲得していれば、教授の負担しなくてはいけない金額が減るからです。(アメリカの博士課程にかかるお金については以下の記事で詳しく説明をしています)

 そのため、教授にとってのメリットとしては、学生が外部から奨学金を獲得してくれば、優秀な人材を安く手に入れることができるから、というように説明をすると、もっとわかりやすいでしょうか?もちろん、推薦状の執筆などを親切心でやってくれるという人もいるかもしれませんが、私は教授という仕事もビジネスであり、grantに応募して得た資金を使って、ポスドクや大学院生に給料を払い、研究プロジェクトの指揮をとり、研究室を運営していくという大変な仕事だと思うことから、使えそうな人材に目をつけて自分の研究室への勧誘をしたり、進学のサポートをしているということなのではないかな、と考えます。(教授には怖くてこんなことは直接聞けないので真意はわかりかねますが...笑)

とは言え、そのように支援した学生が必ず自分のラボにくるとは決まっていないため、ここまでチャンスを与えてくれサポートをしてくれるというのはなかなか珍しいかもしれません。このように、志望大学の教授から推薦状をいただく事ができれば、それはその大学に応募する際にも、他のトップレベルの大学に出願する際にも、かなり強力な推薦状となると思います。また、奨学金の応募の際にも、推薦状の提出が求められますが、志望大学の教授から推薦状をいただいているというのは強いコネクションがあるということ支持する重要書類となります

 

f:id:c201233w:20210301134917p:plain
f:id:c201233w:20210301135107p:plain

 

さて、今回は研究室・教授とのコネクションの作り方ということで、大きく6つのステップに分けて紹介をしましたが、ぜひ6番まで目指して強力なコネクションを作ってもらえればと思います。また、最後に、今現在コロナ禍で出願準備をしている人にちょっとだけアドバイスですが、コロナのせいで今現在は研究室訪問や研究経験をさせてもらいにいくというのが難しい時期だと思います。しかし、それは世界中のどこにいても同じで、逆に言えば、日本にいてもアメリカにいても地域的な格差というのが少ないというメリットとして捉えることもできます。研究室訪問で訪ねてくる学生がいないため、教授もコロナ前よりもオンラインでのミーティングに積極的なのではないでしょうか。あまり悲観的に捉えず、日本にいながら今できることは何か、ということを考え、実績作りやコネクション作り等に挑戦してもらいたいです。