Life in Berkeley アメリカ大学院留学記

2021年からUCBのPh.D.課程にて研究留学中 <進学準備、研究生活、日常生活を紹介します>

動物実験について考えること・動物実験の克服方法

突然ですが、実験動物と聞いて何を思い浮かべますか?実験動物を使用した動物実験についてはどういう印象を持ちますか?

実験動物として思い浮かべる動物としては、マウスやウサギなどの小動物が多いのではないかと思います。また、動物実験については、実験動物主体で考えると、動物が可哀想という意見が多いかと思います。一方で、動物実験をする人間主体で考えると、動物を殺すのが怖い、血を見るのが気持ち悪いと言った意見もあるかと思います。

なぜ、こんな話をしているのかというと、私は学部時代は微生物の研究室にいましたが、UC Berkeleyの大学院に進学してからマウスを扱った研究をするようになり、実験動物の命や動物実験をすることについて色々と考えさせられたためです。

また、実験でマウスを使う(殺さなくてはいけない)ときも、最初は途中で気持ち悪くなるのではないか、最後までできるかわからない...ととても心配でした。

そのため、今回は私自身の動物実験についての考えと、動物実験の克服方法について書いてみようと思います。私と同じように動物実験で悩んでいる人や、また(動物実験の有無に限らず)大学院に入ってから研究分野を変えるということについて不安に思っている人を少しでも勇気づけられたらと思います。

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実験動物/動物実験とは?

実験動物とは、教育、試験研究や生物学的製剤など科学上の利用を目的とした実験(動物実験)に用いられる動物のことを指します。実験動物として使用される動物は、ショウジョウバエ、魚類、線虫からラット、マウス、イヌ、ネコ、サル等の哺乳類に至るまで様々ですが、脊椎動物に限れば、国内でも世界的にみても、使用される動物は主にラットとマウスが90%以上を占め、イヌ、ネコ、サルは全体の1%程度と言われています。これら動物のほとんどは、研究用に育てられた動物を業者より購入して使用しますが、イヌ・ネコ・サルは地方自治体において殺処分になるものの一部を合法的に譲り受けることもあるようです。(出典:動物実験について | 日本生理学会)。

そして当然のことですが、これらの動物実験はむやみやたらに行っていいものではなく、動物愛護の観点から、1959年にRussellとBurch氏によって提唱された世界的な動物実験の基準理念「3Rの原則」というものがあり、これに基づいて行われています。

・Replacement(できるだけ生物以外に置き換える)

・Reduction(動物を使うのは、できるだけ減らす)

・Refinement(技術の洗練をし、苦痛を軽減する)

動物実験に関する歴史や法律等については、詳しく説明しているホームページ等がありますので、興味のある人は調べてみてください。

実験動物としてマウスが使われる理由

その中でも特にマウスが使用される理由としては、サイズが小さいため餌やスペースを多く必要とせずコストが比較的安いこと、ヒトと同じ哺乳類で遺伝子がヒトと類似していること、個体差が少ないこと、繁殖がしやすく安定した個体数を維持できることなどが挙げられます。また、日本語ではマウスもラットもネズミになりますが、動物実験で使用される実験動物にはマウスと区別して、ラットというマウスの10倍ほどの大きさがあるネズミも使用されます。

特に調べていて驚いたのが、一般的なマウスやラットは1匹あたり数百円〜数千円程度であるのに対し、サルを使用しようとすると1頭あたり30~50万円程度かかるということでした。どんなに霊長類でヒトに近いからといって、サルを使って試行回数一回(n=1)の実験データを取得するよりも、トランスジェニックマウスやノックアウトマウスといった遺伝子改変技術によりヒトの疾患モデルとなるように作成したマウスを用いて実験を行った方が、より新たな知見に繋がる、といった考えの元にマウスが使用されてきたのではないかと考えます。

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マウス(左)とラット(右)
動物実験について思うこと

ここまで動物実験と主に使用される実験動物であるマウスについて、一般的な説明をしてきましたが、ここではマウスを使用した実験を行う当事者として感じることをそのまま書いておきます。はじめに書いておきますが、私は何事もかなり論理的に考えて自分を納得させるタイプで、物事に感情移入をする前にその事実を受け止めようとするため、以下の文章は人によっては冷たく感じるかもしれませんが、あくまで私個人の考え方であって、この考えが正しいと思っているわけではありません。

まず、私はペットとして犬や猫などの哺乳類を育てたことはありませんし、あまり動物が好きなわけではありません。でも、やはり動物実験を好んでやりたいわけではないし、実験に使われるマウスに対しては可哀想だなと思っています。ちなみに、実験に使われるマウスには白い毛並みに赤い目をしたものと、黒/茶色い毛並みに黒い目をしたものがいて、私は個人的に後者の方が可愛いと思っているのですが、今実際に研究で使用しているマウスは黒い方で、これらを実験に使用しなくてはいけないというのは心が痛みます。

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実験用マウス

しかし、どんなに可愛い生き物だとしても、実験動物として生まれてきた以上、人間が何を考えようが彼らの運命は研究室の中で一生を遂げるものと生まれた時から決まっています。怖いものは怖い、可哀想なことは可哀想、とどんなに理屈で説明されても感情のコントロールは難しいかもしれません。しかし、そのような感情に流されて、実験動物を前にして殺すのが怖い/可哀想といった感情を持つことは違うと思っています。

それは(この例えがいいかはわかりませんが、)ベジタリアンやビーガンの人が、もうステーキになってしまった動物を見て食べるのを躊躇するのと同じだと思います。彼らには色々な理由があると思いますが、もし動物愛護の観点でそのような生き方をするようになったのだとしたら、目の前に出てきた肉に手をつけずに捨てるという選択は正しいのでしょうか?もちろん、現実ではベジタリアン料理を頼んでいればそのような状態にはならないかもしれませんが、もし仮に自分が頼んだ料理に肉が入っていたらそれらを取り除いて食べるのでしょうか?私は本当の意味で動物の命を大切にするという意識を持っているのであれば、既に人に消費されるために犠牲となった動物の命は食べてあげることでしか償えないと思います。結局、自分自身のライフスタイルを優先して食べないという選択をするのであれば、それはどんなに動物愛護を謳っていたとしても人間のエゴでしかないのでは?と思うのです。

そのため、動物実験そのものに問題意識を持って色々な議論を繰り広げるのは構わないと思いますが、実験動物として存在している生き物に対して可哀想といった感情を持ったところで何も意味がありません。私はマウスを実験に使用して殺すことを汚いことだとは思っていませんが、もし生き物を殺すということを汚らわしいことだと思うのであれば、もしくはあまりに恐ろしくて/可哀想でできないと思うのであれば、そのような人が無理して動物実験を行ったところできっと実験はうまくいかないと思うし、動物の命がそれだけ無駄になるのでやらない方がいいと思います。

そして、大前提として、人間として生きている以上、動物実験に限らず、食肉やペットなど様々な形で人間は他の生き物の命の恩恵に授って生かされているのだという事実に目を向けることが大事だと思っています。そのため、動物愛護の観点からベジタリアン/ビーガンになったり、動物愛護運動に参加したり、動物実験を含む製品の非買運動をする人など様々な人がいると思うのですが、私は彼らのことを否定はしませんが、結局のところ、動物性食品を排除した生活を行っても植物の命には頼って生きているわけだし、動物愛護運動に参加していても病気になったときに使用した治療法/薬の確立には動物実験が背景にあったりと、他の生き物に全く影響を与えず生きるということはできないのだと思っています。なので、私自身は動物実験も食肉も含めて、人間として生きているだけで他の生き物の命を犠牲にしているということを認識し、それらの命に感謝して命を無駄にしないようにすることが必要だと考えています。そのためには、動物実験を行う際には必要最低限の回数で実験が終わるように、そして動物が苦しまないように十分計画した上で意味のある実験をすることが重要だと考えており、私自身が実験技術の習得のために練習をする時にはなるべく早く実験を上手く行えるようにと一回一回の機会を大切に行うことを心がけています。やると決めたならちゃんと向き合う、その命ひとつひとつを無駄にしないように真剣に実験に取り組む、そして実験のために犠牲になってくれたマウスには感謝をする、これが私にできる最大限のことだと思います。

ただ、動物実験として行われている実験の中には、化粧品や化学薬品の被害について調べるために、実験動物に拷問のような形で薬剤の投与などを続けるような実験があったりと、すごく残酷でその実験が人間にとって意義があるのかわからないようなものもあるようです。当然、そのような動物実験はやめるべき/改善されるべきだと思います。しかし、動物実験といっても一括りにはできず、研究者として動物実験に携わっている人は動物実験をしなくて済むならしたくはないが、疾患の原因を追及したい、より良い治療法を開発したいという思いの元に動物実験を含む科学的手段を尽くして病気の解明・治療法の開発等に努めている人がほとんど、そしてその科学・医療の発展の恩恵に授かってあなた自身も生きているのだ、ということを知って欲しいと思います。

動物実験の代替手段

ここまで、動物を行うことを前提に話を進めてきましたが、現代の技術を駆使して、実際の動物を使わないですむ代替法はないのでしょうか?最初に説明した動物実験の原則(3R)の最初のRであるReplacement(できるだけ生物以外に置き換える)というのがこの問いに当たります。

実際、マウス等の実験動物を使用しない実験モデルとしては、培養細胞を用いたin vitroの研究やコンピューターシュミレーションを使用した研究方法等があります。初歩的な話ですが、生物の実験にはin vivo/in vitroという大きく2つの実験方法があり、それぞれ以下の意味があります。

・in vivo:動物個体をそのまま用いて行う実験。"生体内で"という意味のラテン語が由来。

・in vitro:動物個体から、組織の断片や、細胞などを取り出して行う実験。"試験管内で"という意味のラテン語が由来。

そのため、研究者の中にはコスト面でも時間面でも安く早く行うことのできる、培養細胞のみを用いたin vitroの研究のみを行っている人も存在します。しかし、細胞(in vitro)で行った実験を動物個体(in vivo)で再現出来て初めて、この現象は生体でも起きているという裏付けをすることができ、価値のある研究データとなるという考えのもと、私の所属する研究室ではin vivo、in vitroどちらの研究も行っています。実際に、in vitroで見られた結果がin vivoでは再現されないという実例も多くあり、そのような実例があるからにはin vivoでの研究というのは他の手法では代替が利かないと考えます。

また、コンピューターでのシュミレーションについても、シュミレーションができるくらいにまで数々の生命現象に対する知見が蓄積しないとシュミレーションをすることはできませんし、生体内で起きている未知の生命現象を含めて全てを完全に再現するということはできないと考えられるため、ある程度研究の進んでいる分野においてシュミレーションの技術を使用することはできても、未知の生命現象や病因を探る研究においてはやはり実験動物を使用した実験は不可欠なのではないかと考えます。

さらには、新薬をヒトに使用する前には必ず動物実験で試すということが行われていますが、それについても今後しばらくは継続して動物を実験台にするという形は変わらないと思います。

ただ、研究によって新たな知見が生まれるのと同じくらい、研究そのものの形というのも常に進化しつつあり、これまでにはなかったような研究手法・実験手法というのがどんどんと開発されているのも事実です。下の写真はより生体内(in vivo)に近い細胞培養の方法として、in vitro3次元培養モデルという技術を紹介したものなのですが、高さ方向に厚みを持たせた三次元培養(3D培養)や2種類以上の細胞を同時に培養する共培養という手法がin vivo実験に代わる手段として注目されているようです。下の画像内にあるように各部位ごとに様々な培養細胞からなる三次元培養モデルが存在しており、これらがin vivo実験の代変手段となるには更なる技術の革新等が必要だと考えられますが、in vitroの実験法の発展次第では将来的には動物実験を行わずに研究が進められる、というような未来もあるかもしれません。

In vitro三次元培養モデルがin vivo実験を置き換える? | 株式会社高研

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in vitro三次元培養モデル
動物実験の克服方法

動物実験と一般的な実験動物であるマウスについて色々と書いてきましたが、この記事のメインは動物実験の善悪を議論することではなく、動物実験をどうやって克服するのかということです。誰でもこうやったら動物実験を克服できる、という万能な方法はありませんが、実際にやってみるまで無理なんじゃないかと心配していた私もなんとかなりました。ここでは、私が初めてマウスを使って実験をする時にどのように取り組んだのかを書いておきます。

まず、最初に私がマウスを使った実験として行ったのはperfusion(灌流固定)というものです。これは特定の組織(私の場合は脳)になるべくダメージを与えずに取り出すために、マウスに麻酔をかけた状態で心臓の左心室に針を刺してそこから組織固定液を流し込んでマウスが死んだら特定の組織を素早く取り出すというものです。実際の写真は少しグロテスクだと思うのでイラストを載せておきましたが、これを見てもらうとイメージできるかなと思います。。

私がこのperfusionを最初に行ったのは研究室に入ってから2週間目の時だっだのですが、正直1週間目に初めてマウスに触り、マウスの持ち方を学んだ状態からいきなりperfusionをやることになり、麻酔をかけた状態でマウスを切り裂くのがすごく怖かったです。一応先輩のポスドクが行う様子を横で見せてもらい、その翌日に自分でもやってみるという流れだったのですが、見学させてもらっている時に麻酔が完全にかかっていなかったのか、ハサミで開腹をしている最中にマウスの頭が上下しているのを見てしまいすごく気持ちが悪くなりました。

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mouse perfusion

それから翌日に自分で行うまでの間、見学している時に見た光景と、小学生の時に自分の脈を測っていて気分が悪くなり失神したというトラウマ(苦笑)とを思い出しながら、「マウス 灌流固定 怖い」などのキーワードでインターネットで克服方法等いろいろ検索したりしていました。しかし、検索していてもあまり気休めになるようなサイトはなく、寧ろ、医学部や薬学部・一部の生物系の学科などでは学校の実習等で動物実験を行わなくてはいけないということで、私と同じような心配をしている人が多くいるということを知っただけでした。。 

中には魚をさばいたりして練習すると慣れるのではないか、などの方法も書いてあったのですが、魚で練習している暇はないし、魚は何も問題なくさばくことができるけど、魚とマウスとでは全然違う!と思っていました。実際にやってみた感想としても、魚とマウスでは見た目も種類も大きく異なるし、違うかなと思いましたただ、血を見るのに慣れるという意味であれば、魚などより身近な生き物の血をみたりその臭いに慣れるということから始めるのもいいのかもしれないです。

前置きが長くなりましたが、私は結局あまり考える時間もなかったので(見学した翌日に実践)、何も準備できないまま実験を行うことになりました。でもこれが却ってよかったのだと思います。というのも、やったことがないもの(未知)に対する恐怖というのは、やってみない限りはなくならないのに、やって見るまでに時間があると上手くいかなかったらどうしよう、もし失敗したらというように悪い方向に考えすぎてしまうからです。数ある選択肢の中から色々と吟味して選択をしなくてはいけない時は、色々な可能性を検討しながらどうするのがベストかを考えた方がいいと思いますし、私自身、挑戦するのは好きだけど同時に失敗するのもすごく怖いという性格なのでかなり慎重に物事を進めます。しかし、この実験のように、遅かれ早かれ絶対に克服しなくてはならないことなのであれば(やらないという選択肢がないのであれば)、色々と悩んでより恐怖を増大させるより、あまり考えすぎずにさっさとやってしまった方がいいと思います。

私は先輩がやっていた様子を思い出しながら、ひたすらプロトコルを見てシュミレーションをして、当日なるべくスムーズに実験操作を行うということだけに集中をしました。そして、当日は実験を失敗せずに行うということにすごく集中していたので、気持ち悪くなる間も無く終わっていました。このように書くとすごく残虐なことを平気な顔をして行っているというように聞こえてしまうと思うのですが、本当に実験そのものに集中をしているとそれ以外のことは見えなくなって余計なことを考えている余裕はないと思います。もちろん、動物実験をするという立場上、動物倫理であったり、動物実験をすることの意義について考えるというのはありますが、それは実験をしていない時に考えるべきだと思います。

あとは、動物実験=残虐行為というように考えてしまい、動物を殺すことにすごく恐怖/可哀想という感情を持っている場合についてですが、動物実験を行う際の手順というのはなるべく動物に苦痛を与えないように計画されているもので、手順通りに正しく行えば動物が苦しんだりもがいている様子をみることはありません。なので、実験を行うヒトにとっても実験動物にとっても、正しい実験操作というのは非常に重要です。可哀想という気持ちがあるのであれば、少しでも実験をうまく行えるようになって、動物に苦痛を与えずにより少ない回数でデータを出せるようになってください。

なので、私からのアドバイスとしては、

・あまり深く悩みすぎずに挑戦してみるということ

・実験そのものに集中するということ

・(実験動物のことを考えるのであれば)早く実験技術を上達させて苦痛を与えないようにしようという心構えで一回一回の実験に真剣に取り組もうとすること

ができれば、気持ち悪い・可哀想でできないという気持ちは少しは改善されるのではないかと思います。

動物実験がどうしてもできない場合

どうやったら動物実験を克服できるのか、ということについて長々と書きましたが、どんなに色々と試してもどうしてもできないという人もいるかと思います。薬学部に通う友人にマウスを使った学生実験が本当に無理だった、殺すのが可哀想すぎて見ていられなかったといってマウスを使った実験がトラウマになったという人がいますが、彼女は結局マウスを使わない研究室に所属したらしいです。どんなに説得されたとしても、人には向き不向きがあると思いますし、どうしても動物実験が嫌な場合は彼女のようにそれを行わない研究室に行くというのも一つの手だと思います。動物実験を必須とする研究室しか存在しないということはないので、動物実験ができなかったからといって研究者には向いていないなどと諦めるのではなく、自分にあった道を模索したらいいと思います。

実際、動物実験がやりたくて研究室を選ぶ人はいないと思いますが、やりたくなくて避けて通るために研究室を選ぶ/変える人はいると思います。私の場合は自分のやりたい研究分野の研究をするにはマウスを使った実験が不可欠だった、ということからこの研究室で生きていくためには動物実験ができないというわけにはいかず後戻りできない状態で半ば強引に挑戦しましたが、本当に無理と思っている人は気持ちの準備ができていない状態で無理に行うのではなく、少しずつステップを踏んで動物実験に慣れるようにしてもらったり等、色々とやり方はあると思います。

また、もし進路選択を悩むくらい動物実験に不安があるのであれば、医者や看護師、研究者等の道を何も挑戦せずに不安に思うというだけで諦めてしまうのはもったいないと思うので、何らかの形で動物実験に参加してから考えるといいかと思います。動物実験というのは誰でも行えるわけではなく、訓練等を必要とするので実際に解剖等をさせてもらうのは難しいかもしれませんが、横で観察するだけでも、何も知らないのと実際に現場を見たのでは考え方が変わってくることもあると思います。進学先として検討中の研究室等に相談してみるというのもいいかもしれないです。

大学院に入ってから研究分野を変えても大丈夫?

最後になりますが、動物実験の有無に関わらず、大学院に入ってから研究分野が大きく代わることに不安を持っている人も多いかと思います。結論から言うと、研究分野を変えて全然大丈夫です。

私自身は学部の時は微生物遺伝学の研究をしていましたが、今はマウスを使って老化の研究をしています。どちらも生体内でのメカニズムの解明をしているという点では共通点がありますが、やはり扱っている生き物が全然違うし、研究技術もこれまでの技術が使用できるわけではないので、 ついていくのが中々大変だなと思うことは多いです。しかし、学部から大学院に移るタイミングや、大学院からポスドクに移るタイミングというのは、研究分野を変える絶好のチャンスだと思います。基本的には一つの研究室に所属したら、様々なプロジェクトに携わることはあってもその研究室にいる限りは大きな研究分野が変わることはあまりないと思います。しかし、次のステップへと進むタイミングであれば、これまでに挑戦したことのない新しい分野に挑戦するのもありだし、これまでやってきたことの延長線上に存在するようなテーマに移って自分の知識の幅を広げるということも可能です。

もちろん、最初に出会った研究テーマがすごく自分の興味に合致しており、継続して研究したいテーマなのであれば一つの研究分野に居続けてもいいと思いますが、何か研究をしていながら他の研究テーマに興味を持ったということがあるのであれば、ぜひ挑戦するべきだと思います。新しく分野を変えてすぐの時は、慣れないことも多いかと思いますが、自分で興味を持って足を踏み入れた分野なのであれば周りにキャッチアップできるように勉強をするのもあまり苦ではないと思うし、楽しいと思います。また、研究分野同士は互いに重なり合っているところも多いし、仮に研究内容としては繋がりがなくても”未知の課題に取り組み新たな発見をする”という研究を進めるという上での基本姿勢はどの分野にいっても共通のことなので、分野が新しくなったからといって、これまでの研究経験や知識が全部無駄になるというわけではないと考えています。

なので、大学院に入って新しい分野に変えるのは大変だけど楽しいと思うので、やってみたいことは積極的にやってみることをおすすめします!