Life in Berkeley アメリカ大学院留学記

2021年からUCBのPh.D.課程にて研究留学中 <進学準備、研究生活、日常生活を紹介します>

コロナ禍での留学 〜渡米後2ヶ月経過〜

1月半ばに渡米してから2ヶ月が経ちました。1ヶ月経過の時点で3ヶ月くらい経った気がすると書いたのですが、流石に6ヶ月経ったというのはオーバーな気がします。でもやっぱり2ヶ月というのは自分でも信じられず、少なくとも4〜5ヶ月くらい経ったような感覚はあります。

そしてこのブログは渡米してからすぐ始めたのですが、中々時間が取れず、1週間に1回は更新しようという目標をギリギリ達成しているという感じです...笑 記事も書きたいものから順番に書いているので、進学関係の記事が停滞中です。記憶が確かなうちに早く書かないと。。

今回はこの2ヶ月目の振り返りとして、教育機関と研究機関の違いというものを痛感させられた私的に大きなイベント(ただのラボミーティング笑)があったので、そのことをテーマに書こうと思います。最初の1ヶ月目の私は新しいことだらけで、まだこの環境の本当の厳しさを知らなかったな〜(今もまだ完全にはわかってないのだと思うけれども...)

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1. この1ヶ月(2ヶ月目)の生活について

渡米してきたのが1/12なので、2/12~3/12までの1ヶ月が渡米2ヶ月目にあたるのですが、この2ヶ月目も引き続き研究室以外の新しい友達はできていません。。 ちなみに、研究室の人間関係というのは友達というより同僚という感じなので、、、ギクシャクしているとか、そういうわけではありませんが、週末に一緒に遊んだりするような感じではないです。あとは、私の前にラボに入った学生は今2年目の終わりを迎えようとしている人なので、だいぶ私との間に差があり、自分と同じタイミングで新しくPh.D.課程に入学した同期がいないというのも人との距離が縮まりにくい原因な気がしています。

イギリスに留学している友人は、友達を介して知り合った人が彼氏になったとか?そんな素敵な話を聞きましたが、私は彼氏どころじゃなくてそもそも友達がいない。。笑 まあ、友達がたくさんいたところで遊んでいる時間もあまりないのでそんなに悲しいとは思わないし、日本の友人と週末はZoomで話したりしていて楽しいので、それほど問題ではないのですが、この状態がずーっと続くと本当に現地のコミュニティーが広げられないなとは思ってしまいます。

日常生活面では来て最初の1ヶ月でだいぶ生活の立ち上げに関することはやったので、この2ヶ月目は面倒な手続きなどで時間や体力を取られることはなかったように思うので、そういう意味では少し生活は楽になったように思います。

研究面では、先月の振り返りの際には"今月の研究での1番の進歩はマウスを使った実験ができたということ"と書いていたのですが、もう今月になるとマウスを使うのは当然で、いかに早く正確に実験を行うかということに集中するという感じでした。そして、研究2ヶ月目にあたる今月の研究面での進歩は、マウスの脳を取り出して、スライスして、免疫染色をして、顕微鏡でイメージングをするという一つの実験の一連の操作(下のフローチャート)を1人で全てできるようになったということです。まだ、練習段階という扱いでデータを取らせてはもらえていないのですが、この2ヶ月で何も知らなかったところからここまでできるようになったというのは(普段全然褒めない)PIにも褒められたので、まあ頑張ったと思っていいのかな。(甘い考えかもしれないけど...)

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2. ラボミーティングでの発表

続いて、今月の1番の重大イベントはラボミーティングでの発表でした。私のラボでは毎週金曜日にIndividual Meeting(個別面談)とLab Meeting(全体ミーティング)の2種類のミーティングをやっていて、個別面談では毎週の進捗状況をPIに報告するのですが、全体ミーティングは毎回1人の人が発表するゼミのような感じです。今月はその順番が自分に回ってきて初めて発表したのですが・・・。結論から言うと、あまりうまくいかなくて結構落ち込むことになりました。

いつも嫌なことがあったときにはなるべく引きずらないようにして、一回めっちゃ落ち込んだら、あとは気持ちを入れ替えて先に進みたいと思っているので、今こうして詳細を振り返りながら書くのはあまり気が進まないのですが、今は鮮明に覚えていても書いておかないと忘れてしまうと思うので、書いておこうと思います。2ヶ月目の私はこんなだったのか、とまた数ヶ月後に振り返ってそのときに成長を感じられているといいなと思います。

まず、ミーティング内での発表は前半が研究の進捗状況の報告、後半がJournal Club(論文紹介)なのですが、私は発表時の時点でラボに入ってからの日数がまだ約1ヶ月と浅く、研究成果というのは何もありませんでした。しかし、発表は持ち時間が質疑応答も含めて1時間もあって、前半を全部すっ飛ばして論文紹介だけするよりは、何かこの1ヶ月で学んだこと・できるようになったことの報告/アピールをした方がいいかな、というように考え、前半は自分のこの1ヶ月の進捗を、後半で論文紹介をすると言うプレゼンを作りました。

しかし、この考えが裏目に出てしまいました。前半のスライドを読んでいる最中に最初のストップが入り、“Lab Meetingと言うのはあなたの個人的なトレーニングや実験の結果について事細かに話す場ではない。プロジェクトの成果として論文に発表できないような結果は報告する価値なし。”と言う内容のコメントを入れられ、せっかく作った前半部分のスライドは5ページくらいすっ飛ばされ、読ませてもらうこともできませんでした…。また、後半部分の論文発表も私としては何回も読んで論文の全体について理解して発表したつもりなのに、それをうまく伝えられなかったようで、what a complicated paperと言われてしまいました。

もちろん、他の人はLab Meetingではやったこと全部ではなく、プロジェクトの進展に繋がる部分のみを報告をしていると言うのは知っていたのですが、私は現時点ではまだ色々な実験のやり方を取得しているトレーニング期間のような形であり、当然何もプロジェクトに貢献できるようなデータはないし、少なくとも最近ラボに加わった人は私が最初に知らなくて困ったようなことを知らないかもと思って、かなり基礎的な内容から自分がやったことを噛み砕いて話そうと思ったのですが、、それがダメだったようです。

私としては、このプレゼンはラボでの初めてのプレゼンだし、英語でまだ慣れていない研究分野のプレゼンをするのは不安だったので、間違った説明をしないように全部スクリプトも書いて、発表の練習もして、というように自分としてはベストを尽くしたという状態で発表をしたため、正直このような評価になるとは思っていなくて結構びっくりしたのと、指摘の仕方がかなり厳しい言い方でちょっとショックを受けました

特に、これまでの人生では、自分がベストを尽くしたときにはそれが評価されるようなことが多かったというのと、前の研究室にいた時と同じようにプレゼンをしたのでそんなにきついダメ出しを受けるとは思っていなかったのがダメージに繋がったように思います。。

3. 教育機関と研究機関の違い

では、なぜ今回のような指摘を受けることになったのかという反省なのですが、教育機関と研究機関の違いを理解していなかったという点に全部行き着くと思いました。初回のミーティングで落ち込んだ話を、学部・修士でお世話になった研究室の教授に少ししたのですが、”ラボミーティングのあり方は大きく変わると思う。教育機関と研究機関の違いだね。”という返信をいただき、自分に欠けていたのはこの認識だなと確信しました。

これまでの学部・修士での研究は教育機関としての大学内の研究室で行っていたため、最先端の研究を行ってどんどん成果を出すというよりは、個人個人のペースで研究の基礎を習得する・研究を行う際のアプローチ方法を学ぶというような要素が強く、“研究を通して学ぶ”ということをメインに行う場所だったように思います。そのため、教授の学生への接し方も、研究に限らずどんなことでも自分のペースで好きなことを好きなようにやっていいんだよ、というような対応で、私はそのような環境で伸び伸びやりたいことをやりたいだけ挑戦させてもらったように思います。もちろん、研究の結果が出ないことに落ち込んだりもしましたが、教育機関での研究というのは別に成果が出なくても(ネガティブデータでも)卒業することはできるし、そのときに感じていたプレッシャーというのも自分自身がここまでやりたい/成果を出したいという高めの目標設定をしていたことで生じた、私が自分自身に課していたプレッシャーだったということに気付きました。

それに対し、今現在所属しているUCBの研究室は研究機関として存在しているために、そこでやるべきこと/求められていることは”研究成果を出し、インパクトファクターの高いジャーナルに論文を投稿する”ということ、これに尽きます。もちろん、博士課程を通して研究経験を積み、研究者として成長するという教育的な目的もあると思いますが、その研究者としての成長というのは、研究で良い成果が出せて初めて認められるという世界なんだと実感しています。

なので、これまで自分のいた教育機関におけるラボミーティングでは、失敗したことも成功したことも全部含めて成果であり、どういうことがうまくいっていないかということなどを話してその場でみんなでディスカッションをしたりということをすることが許されていた/求められていたのに対し、研究機関におけるラボミーティングではプロジェクトの進捗状況を話し、自分がどれくらい貢献しているのかということを示す、ということが求められているという大きな違いがありました。

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教育機関/教育者(左)と研究機関/研究者(右)

4. PI(指導教官)の〇〇がキツすぎる

PIの〇〇がキツイ、の〇〇に入る言葉は、口調・表情・言葉のチョイスです。

英語というのは、日本語に比べてただでさえストレートな表現方法の言語だと思うのですが、それにも関わらず、私のPIはあえてキツイ言葉を選び、厳しい口調で話していることが多いように感じるのと、それを話している時の顔つきも眉間にシワが寄っていてすごく怖いです。そして、普通にしている時でも口角下がり気味で若干怖いです(下のイラストはイメージですが、左が怒ってる時、右が平常時って感じかな。。笑)

まあでも、私にだけ厳しい言い方をしたわけではなく、誰に対しても普段からきつい口調・怖い表情・結構ストレートな表現で話をする人なので、私に対して指摘をしていた時も別に怒っていたわけではなく、ただ単に事実として伝えただけだと思います。そして、今まであまりそういう人と接してきたことがなかったので、やりにくさ・ちょっと居心地の悪さを感じてしまうのですが、彼女の言葉や表情一つ一つを受け止めて自分が責められているように感じてしまうのではなく、指摘されている重要なポイントだけを受け取って、それ以外はスルーするということができるようにならないと、何か言われる度に落ち込んでいるようではダメだな、と思っています。でも、やはり、zoomの画面上でも既に怖いので、コロナが終わり対面になるまでに早く慣れないと...笑

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そして、PIが怖いというのに加えて、ちょっと困るのが、PIは自分が選んだ人材(研究室の学生)は何事も自分の基準をクリアすることを当然と思っている感じがあり、その基準をクリアしていていれば何も言われないけど、クリアしていないと指摘・批判を受ける、そしてPIの期待を大きく越えると褒められ、期待値を上げられるというルールがあるようなのですが(感じ取った)、私は入ってまだ日が浅いのにそれらが忘れられている/考慮されていないことが多いように感じることです。

もちろん、それだけ期待してくれているということならば嬉しいことなのですが、今回の件のように、ラボミーティングのルール等、初めて聞くことを知ってて当たり前のような口調でPIから指摘を受けることがこれまでにも多々あり、(研究機関であるが故に仕方ないのかもしれませんが)もう少し新しくラボに入った人のためのガイダンス的なものがあってもいいのに…と思ったりしてしまうこともあります。今回の件も、研究機関でずっと研究をしているPIや先輩からしたらプレゼンでは成果報告のみをするというのは常識であっても、私のこれまでの常識は教育機関でのプレゼンだったので、事前に一言、前半の成果報告は飛ばしてJournal Clubだけやればいいよ、というような話やアドバイスをしてくれればいいのに、、何で何も事前に教えてくれなかったのに私がみんなの前でダメなプレゼンの例みたいに扱われないといけないの?!とちょっと理不尽な対応を受けたようにも感じました。

 

しかも、本当は研究室に入ってから4-6ヶ月後に最初のプレゼンをするらしいのですが、私が加わった方が人数が増えて(みんなの順番が回ってくるのが遅くなって)いいからみたいな考えで、ローテーションを管理してる人がまだラボに入って1ヶ月なのに私を入れたらしくて…。PIも私の発表に指摘を入れつつ、何でこんなに早い段階で発表しているの?と言っていたので、かなり早い時期に発表してしまったようです。。

このように、自分の実力不足もあるのだと思いますが、こういう周りの人の意地悪ではないけれど自分勝手さ?というのも今回の件には関係していた気がします。そういうことも含め、きちんと毎回わからないことは確認を取り、嫌な時は嫌とはっきりと自分の意見を伝えるということを、これまで以上にちゃんとやり、自分のポジションは自分で獲得する必要がある、ということを学びました。

5. 今後の目標

色々と今回の経験の詳細を書いていたら不満や愚痴っぽくなってしまったところもあったように思うのですが、私自身が色々と感じる中で不満に思うこと、嫌だなと思うことは自分の中に溜め込まずに誰かに話したり紙に書き出したりして外に出すということが一つ目です。

また、PIや先輩の言っていることややり方が必ずしも正しいわけではないと思うので、言われたことを全部受け止めて自分をできていないと責め過ぎるのではなく、指摘/指導された中からエッセンス/キーワードとなるところ、例えば今回だったら"教育機関と研究機関の違いを意識する"という点といったことを取り出して、それを直す/意識するようにするということが二つ目です。

本当に毎日、自分から動かないと何もやることがなく放っておかれるような環境の中、知らないこと・わからないことを手探りで調べたり聞いたりしながらこの2ヶ月進めてきた中でのプレゼンだったので、厳しい指摘を受けたことは辛かったですが、私にできることはやっての結果なので受け止めてはいます。また、きつい指摘もそれだけ私を早く鍛えたいと思っての言葉であって、決していじめられてるわけではないので、慣れるまでの辛抱と思って頑張ります。(キツイ言い方や表情を間に受け過ぎない!スルースキルを身に付ける!笑)

そして、これから先もこのような体験はたくさんあると思うので、嫌なことや辛いことがあっても、過ぎたことに対しては悩んだり、不満をいったりと引きずらないというのが三つ目、研究を始めたばかりの今のうちにたくさん失敗して同じ失敗を2回しないように学習するということを四つ目の目標にして、この先もまた頑張ろうと思います。 

 

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