海外大学院進学のための給付型奨学金
今回は海外大学院進学者向けの給付型の奨学金についてです。
既にネット上には奨学金の財団一覧などはありますが(のちほど紹介)、この記事では、面接の体験談などの奨学金を獲得するまでの私自身の経験の共有と、これから奨学金に応募する人へ向けて経験に基づいたアドバイスを行いたいと思います。
給付型奨学金の取得は大学院への合格においてかなり重要な項目と考えられるので、是非この記事を参考にして、奨学金に応募していただければと思います。
- 1. 海外大学院のための奨学金とは?
- 2. なぜ奨学金の取得が重要なの?
- 3. 給付型奨学金一覧
- 4. 奨学金応募のスケジュール例
- 5. 実際に応募した奨学金一覧とその結果
- 6. 応募した奨学金についての印象
- 7. これから奨学金に応募する人へ
1. 海外大学院のための奨学金とは?
奨学金というと、返済義務のある貸与型の奨学金というのもありますが、ここで紹介するのは返済義務のない海外博士課程進学を希望する学生のための奨学金です。
貸与型奨学金がLoanと呼ばれるのに対し、給付型奨学金はScholarshipやFellowshipと呼ばれ、給付型奨学金の取得は大学院への合格においてかなり重要であると考えられます。
奨学金の応募締め切りは大学院への出願よりも前にあることが多いため、早めに取り組むことが大切です。
奨学金の選考審査は一般的には一次審査が書類選考、二次審査が面接となっており、二次審査に合格すると奨学生として採用されるというシステムをとっている財団が多いです。倍率については一部の財団しか公開していませんが、それらによると約15~20倍だと考えられます。
そして、財団によって応募書類は異なりますが、奨学金に申請する際には応募書類を記入するだけではなく、TOEFLのスコア、推薦状など、すぐには手に入らないものも必要です。これらは実際に大学院に出願をするときにも必要となるものなので、余裕をもって準備することが重要です。(余裕のなかった私がいうのもなんですが...)
2. なぜ奨学金の取得が重要なの?
続いて、どうして奨学金の取得が重要なのか?ということですが、学生が入学時に奨学金を獲得していれば、教授の負担しなくてはいけない金額が減るからです。(アメリカの博士課程にかかるお金については以下の記事で詳しく説明をしています)
つまり、学生が外部から奨学金を獲得して入学してくれれば、教授は自分の研究費を使用せずに、奨学金を獲得できる優秀な人材を安く手に入れることができるため、奨学金を持っていると合格しやすくなるということが挙げられます。
3. 給付型奨学金一覧
ここでは、現在応募できる海外大学院進学のための給付型奨学金を紹介します。私が奨学金に応募した時には海外大学院進学の給付型奨学金の情報が綺麗にまとまったページがなかったため、私はネット上を探し回って、色々なところから集めた情報をExcelで管理していたのですが、今調べたらXPLANEというサイトに奨学金関連の情報がわかりやすくまとまっていたのでそれと被らない形で紹介します。
以下は私の収集した情報+一部XPLANEのサイトを参考に奨学金一覧を給付内容の充実度別(おすすめ順)に並べ、注釈を加えたものです。
<年額800~1000万円支給>
・江副記念リクルート財団:年額上限1,000万円、トップスクールに入学する場合のみ
・豊田理化学研究所:800万円/年以内、国際科学五輪代表選抜大会出場経験者のみ
<月額20~25万円+授業料支給>
・船井情報科学振興財団:生活費の支給額$2,500/月+授業料+保険+支度金+渡航費、2年間支給
・フルブライト:授業料は上限$40,000、生活費、家賃手当て等も別途支給、学部生応募不可
・伊藤国際教育交流財団:生活費の支給額$2,000/月+授業料+渡航費、2年間支給、書類手書き
・中島記念国際交流財団:情報科学・生命科学・経営科学が応募可、 生活費月額20万円
・吉田育英会-日本人派遣留学プログラム:生活費月額20万円、授業料250万円まで
<一括支給(高額)>
・経団連産業リーダー人材育成奨学金:募集少ない(1~2人)、450 万円/年(生活費・学費)を一律支給、大学院修了後日本企業において活躍する意志がある者、指定校のみ
・竹中育英会:生活費年間200万円+授業料年間250万円、指定校のみ
・IF育英奨学金:少数名の全額支援(年額$50,000以内)or部分支援($10,000~$20,000)
・ロータリー奨学金-グローバル補助金:年間$30,000~36,000一括
・経団連日本人大学院生奨学金:年間350万円(生活費・学費)を一律支給、学部生応募不可、指定校のみ
・CWAJ海外留学大学院女子奨学金:女性のみ、300 万円/年を一律支給、1年間支給
<月額8.9~14.8万円+授業料支給>
・JASSO:8.9~14.8万円/月、授業料250万円まで、支給期間は修士2年博士3年、採用数多い
<月額10~20万円支給(授業料なし)>
・村田海外留学奨学会:募集少ない(2~4人)、37歳以下の准教授・ポスドク等も応募可、2年間支給
・本庄国際奨学財団: 月額20万円を1~2 年間or18万円を3年間or15万円を4~5年間
・平和中島財団:生活費月額20万円
・重田教育財団:月額20万円、2年間支給
・KDDI:生活費年間200万円、指定校のみ、法律/政治/経済/社会/文化/技術分野のみ
・松下幸之助国際スカラシップ:月額14万円(生活費、入学金、授業料)、人文科学・社会科学の領域のみ
・イノアック国際教育振興財団:月額10万円、指定校のみ
<一括支給(少額)>
・神山財団:併給可能、年2回(各50万円)、MBA・公共政策大学院・ロースクール対象
・金澤磐夫記念財団:一括100万円
・IELTS:30万円一括支給、受験でのIELTSの使用
<支給額不明>
・孫正義育英財団:選考過程で支援内容・金額を決定、給付期間最長4年、海外進学専用ではない
(2021年3月現在)
⚠️注意⚠️
私のブログ、また他のサイト含め全てに言えることですが、これらのWebサイト上にまとめられた情報はその当時の状況をまとめたものです。実際に奨学金に応募する際には、これらの情報を参考に、最新の情報は自分で調べることをおすすめします。そして、応募する財団が決まったら、応募状況等も含めてExcelなどで管理するのが良いかと思います。
↓私が作成したExcelファイル(一部公開)はこのようなものになります。
4. 奨学金応募のスケジュール例
どのくらいのタイミングから応募書類の準備をしたら良いのか、と気になっている人もいるかと思います。続いて、奨学金に応募する際のスケジュール感をお伝えしたいと思います。
下の写真は私の海外大学院準備のスケジュールを示したものです。
まず、最初に注意していただきたいのが、これはモデルスケジュールではないということです。私は全てを短期間に詰め込んだかなりタイトなスケジュールで大学院進学の準備を行なったため、もっと余裕を持って進められる方はその方がいいと思います。
しかし、逆の見方をすると、他のサイトなどでは一年以上前から出願準備をしないと間に合わないなどと書かれていることがあり、私自身も時間が足りなさすぎて上手くいかないのでは?出願を一年伸ばした方が良かったかも...と不安に思っていたのですが、時間が足りなくても最終的になんとかなりました。なので、もし今読んでいる方の中に、準備期間が足りなくて難しそう、と思っている人がいたら、足りないなりにでも頑張ってみると上手くいくこともあると思うので時間を諦める言い訳にせず挑戦してみてほしいと思います。
私は学部3年時に交換留学に行っており、留学自体が終わったのは6月半ばだったのですが、その後1ヶ月ほどUC Berkeleyで研究をする機会をいただき、最終的に日本に帰国したのは7月末でした。そのため、奨学金の応募書類を書き始めたのは8月に入ってからでした。しかし、奨学金の募集要項はもっと早くから公開されているため、早めに情報を収集しておくと焦らずに取り掛かることができると思います。
5. 実際に応募した奨学金一覧とその結果
先ほど給付型の奨学金一覧を紹介しましたが、ここでは私が実際に応募した/応募をする予定であった奨学金について紹介します。一覧を見ると応募できる給付型奨学金はたくさんあるように思うのですが、指定校のみ、分野指定あり、学部生は不可など、条件が当てはまらないものも多かったため、それらを省いて自分に応募資格があるものは全て応募しました。
倍率の公開されている財団の情報によると、約15~20倍の倍率になるため、書類を作成し、面接をたくさん受けるのは大変ですが、なるべく可能性を増やすために応募資格のあるものには全て応募することをおすすめします。
また、先ほど奨学金の応募スケジュールの例を紹介しましたが、スケジュールを提示したのにはもう一つ理由があります。私の出願する大学院の締め切りはどれも12/1前後であったことから、応募資格のある奨学金を出願前に結果がわかるかどうかで2グループに分けました。
これはどういうことかというと、出願時に既に奨学金が確定しているとそのことをアピールできるのに対し、出願後に決まる奨学金は出願時には結果が確定していないのでプラス要素にならないということです。
下は出願前に結果がわかるかどうかでグループ分けをし、さらにそれを締め切り順に並べたものです。赤字で示したものが実際に私が応募した奨学金です。当たり前かもしれませんが、応募締め切りの早い奨学金は結果も早くわかります。そのため、手当たり次第に書類を作成するのではなく、期限の迫っているものから順に応募していく方が良いと思います。
<出願前に結果のわかる奨学金>
- 村田海外留学奨学金 (2019/8/16締め切り)→書類不合格
- 中島記念国際交流財団 (2019/8/23締め切り)→書類合格、面接合格
- 伊藤国際教育交流財団 (2019/8/23締め切り)→書類合格、面接合格
- 経団連産業リーダー育成奨学金 (2019/9/13締め切り)→書類合格、面接合格
- 船井情報科学振興財団 (2019/9/30締め切り)→書類合格、面接不合格
- ロータリーグローバル奨学金 (2019/10/4締め切り)→書類合格、面接不合格
<出願後に結果のわかる奨学金>
- リクルート財団 (2019/10/9締め切り)
- CWAJ海外留学大学院女子奨学金 (2019/10/21締め切り)→書類合格、面接辞退
- イノアック国際教育振興財団 (2019/10/26締め切り)
- JASSO (2019/10/29締め切り)
- 平和中島財団 (2019/10/31締め切り)→書類合格、面接辞退
- 本庄国際奨学金(2020/5/6締め切り)
- 重田教育財団 (2020/6/28締め切り)
私は<出願前に結果のわかる奨学金>の取得を目標としていたため、<出願前に結果のわかる奨学金>には全て応募し、<出願後に結果のわかる奨学金>にも応募をし始めた時点で合格通知を頂いたため、それ以降は奨学金の応募はしていません。
6. 応募した奨学金についての印象
また、応募した奨学金については一応結果も書いておきました。奨学金は一次選考(書類選考)と二次選考(面接)があり、その2つで合否が決定するのですが、書類審査は村田海外留学奨学金以外は通過し、最終的に合格を頂いたのが、中島記念国際交流財団、伊藤国際教育交流財団、経団連産業リーダー育成奨学金です。そして、現在、伊藤国際教育交流財団に支援していただいています。
私が応募した財団について、それぞれどうして受かったのか、落ちたのかということを考察してみると、、、
<村田海外留学奨学金>
唯一書類審査で落ちた村田海外留学奨学金については募集人数が2~4人と少ないことに加えて、さらに37歳以下の准教授・教師・ポスドク等も応募可という条件であったことから、応募時点で研究経験/研究実績のほとんどない学部生であった私に比べて、既に研究を長く行なっている人の方が財団にとって魅力的であったのかな、と感じました。また、この奨学金は村田機械株式会社による奨学金のため、機械/工業系の応募者が優先される可能性もあると考えられます。
<ロータリー>
そして、面接で落ちたロータリーについてですが、ロータリーというのは
ロータリアンが、人々の健康状態を改善し、教育への支援を高め、貧困を救済することを通じて、世界理解、親善、平和を達成できるようにすること(引用)
というのを使命としている財団で、
私が応募したグローバル奨学金というのは、「1: 平和と紛争予防/紛争解決, 2: 疾病予防と治療、3: 水と衛生、4: 母子の健康、5: 基本的教育と識字率向上、6: 経済と地域社会の発展」という6つの分野に当てはまる学問を支援する奨学金なのですが、ロータリー独自の社会貢献度というものが存在しているように感じました。
応募する際も、地域のロータリークラブに面接をしていただき、推薦を受けるというステップを踏まなくてはいけないという、他の奨学金と比べて少し特殊な仕組みになっています。私の場合は推薦はしていただけましたが、老化研究を通して健康寿命を伸ばすということに貢献したいという話をしたところ、寿命を伸ばすというよりもロータリーとしては発展途上国などの貧困問題などに関心があるということだったので、最初から合格は難しいかもしれないという話をされていました。
<船井情報科学振興財団>
船井の面接では志望大学の研究室とのコネクションを留学中に作ったということや、学部時代の成績、あまり研究経験がないのに計画書がよくできているということなどを面接中に評価していただいたのを覚えているのですが、研究経験がほとんどなく、実績が全くなかったということがよくなかったように思います。同じ学部生であっても、3回生くらいから研究を本格的に行なっている大学や学生もいると思うため、そういう方と比べると、これまでの研究実績が全くないというのはマイナスだったかなと思います。
また、船井財団に合格している人の情報を見ると、Engineering、Computer Science専攻の合格者が圧倒的に多く、その他にChemistryやEconomics等も数名見られましたが、船井情報科学財団と名前にもあるように、科学技術の発展に貢献する人材の育成を行う財団ということなので、Metabolic Biology専攻で応募したのも受かりにくかった可能性があるかと思います。同じ生物学でもBioengineering等、技術開発に繋がるような分野だと、もう少し審査員の先生方にも興味を持っていただけるかと思いました。
<伊藤国際教育交流財団>
伊藤国際の奨学金はA4 8ページくらいの書類を全部手書きで完成させなければいけないのと、質問数が他に比べてかなり多いのが特徴です。応募準備に結構時間がかかる奨学金だと思うので、早めに取り掛かる方が良いと思います。
合格者の集まりで感じたことですが、伊藤国際の奨学金は文理を問わず、かなり幅広い分野から応募してくる人がいるという印象でした。アート系志望の学生などもいます。そういう意味では理系以外の人が応募できる奨学金はなかなかないので、それらの人々にとってはチャンスだと思うし、逆に倍率が上がって理系の学生にとっては他の奨学金と比べると合格しにくいかもしれないです。
面接でもあまり専門的な内容をたくさん質問されるというよりは、物事に対する考え方や人間性のような面をより評価しているように思いました。財団のスタッフの方がみんな感じがよくwelcomeな雰囲気で、面接も緊張する感じではなく楽しく自分の考えを話すことができるような感じであったので、これから面接にいかれる方は是非楽しんでください。
<中島記念国際交流財団>
一方、中島記念の面接では、書類選考で提出した研究計画書に対してかなり突っ込まれた質問を受けました。私は大学院に入ってから分野を変えて全くやったことのない研究をしたいと思っていたことに加え、時間がなくて教授に質問したり添削してもらうことなく自分1人で考えながら書いた研究計画書を提出してしまったため、少し回答が難しいなと感じました。
時間に余裕のある人は友人や教授に研究計画書を読んでもらって、専門的な質問をしてもらうと良いかもしれないです。
<経団連>
経団連の産業リーダー育成奨学金も伊藤国際同様に幅広い分野の志望者がいるように思います。また、海外大学院に進学する人は基本的に英会話力はある物だと思うので、趣旨はよくわかりませんが、面接では一つだけ英語質問をされました。あとは、この面接はコの字型に並んだ椅子と机に10人ほどの面接官(偉いおじさんたち?笑)が座っており、1人ずつ順番に質問をしていたように記憶しています。採用人数がかなり少ない奨学金なのに、面接予定者の名簿を見ると結構名前があったので、どうして自分が合格したのかはよくわかりませんが、人がたくさんいても緊張せずに思ったことをはっきりと述べられれば面接は大丈夫だと思います。
これらの各財団の印象は私個人が感じたことであるため、あまり間に受けずそうなんだ〜くらいに思ってください。
7. これから奨学金に応募する人へ
最後に、これから奨学金へ応募しようと考えている方に向けてアドバイスをしたいと思います。面接の前にまず書類選考を通らないと、と思っている人が多いと思うので、私が応募書類を作成する際に重要なポイントだと思うことを書いておきます。
1. ネット上の情報に頼りすぎず、自分で考えて書く
私自身、複数の奨学金に合格しているということから、どうやって合格できるような書類を作ったのか、誰に見てもらったのか、何を参照したのか、という質問を受けることがあります。私は両親に読んでもらうくらいのことはしましたが、それ以外には特にアドバイスをもらったり、何かを参照したりはしていません。(時間がなくてできなかったというのもありますが...)
実際、ネット上にも奨学金に応募したときの書類を公開している人(中には面接には受かっていないのに書類に合格したというだけで有料で公開している人もいました...。)もいるのですが、研究計画書や志望動機は私のオリジナルなもので個人情報も多く含まれているため、私はこの記事では公開していないし、今後も公開をする予定はありません。
また、公開しないもう一つの理由としては、私の合格した書類をみて、それを真似して書いたところで合格しないと思うからです。これは奨学金の応募書類に限らずStatement of Purpose(SoP/Essay)などを書くときにも言えることですが、まだ自分の考えが固まらないうちにそれらの書類(他の人の志望動機など)を読んでしまうと、自分の意見が書きにくくなったり、それが模範解答というわけでもないのにそれに引っ張られてしまったりする可能性があると思うからです。私は奨学金の審査員をしているわけではないので、具体的な審査基準等はわかりませんが、基本的にこういった応募書類というのは正解というものはないので、合格した人の書類を模倣することよりも自分の考えをまとめることに時間を使った方がいいと思います。
でも、全くそういったものを参照するな、といっているわけではなく、まず問いに対する自分なりの答えを考えてみて、そういった自分の考えが言語化できるようになってから他の人の書類なども参考にすると、より良い表現方法などが見えてくることもあるかとは思うので上手に活用して欲しいです。
ここで伝えたいのは何でも調べられて便利な時代だからといって自分の言葉で書くという手間を惜しまないで欲しいということと、その手間を惜しんでしまうと応募書類がオリジナルなものではなくなってしまうので合格しないと思います。仮に書類選考は受かったとしても、自分の言葉で応募書類を書いていない人は面接で落ちてしまう可能性が高いと思います。
2. 自分のことを全く知らない人が理解できるレベルでわかりやすく書く
次に、私が奨学金の応募書類を書く上で一番大事にしていたことは自分の言葉で自分が考えていることを人に伝わるように書くということです。そんなの当たり前のこと、と思われるかもしれないのですが、これまでに他の人の応募書類の添削をしていると、不合格になった書類には書類を読んだだけでは言いたいことが伝わらなかったり(口頭での補足説明を要するような文章)、論理の展開がおかしくなっていて文の繋がりがわかりにくかったり、という研究内容・留学内容以前の問題で落ちている人も多いように思いました。
特に、志望動機や将来の計画などの項目を書く際には、自分に関する前知識が何もない人が読んだ時に、なぜ自分が〜と思うようになったのか、ということがすんなりと理解できるように、書くことが大切です。自分の思いをぶつけるということよりも、読み手を意識して書くことが大事です。そのためには、先ほど私が6章で各財団について分析していたように、各財団ごとの特徴(専門分野をかなり指定しているのか、審査員はどのような人なのか)を捉えて、それに合わせて文章のレベルを変えたり、説明の方法を変えるということも有効だと思います。
そのため、各財団に送った私の応募書類を見返してみても、質問によっては同じような答えにはなりますが、コピペで書いたものは一つもありません。
また、特に研究計画書については、必ずしも審査員の先生が自分の専門分野と同じとは限らないため、なるべく専門外の人が読んでもわかりやすいように説明を工夫するなどが必要だと思います。
3. 嘘はつかないけれど、自分のことを魅力的に見えるようアピールする
最後に、奨学金の応募書類も、就職活動におけるESも、どのような応募書類においても言えることだと思うのですが、ただ自分の言葉で自分の思いを表現するだけではなく、それが相手からみて魅力的に思ってもらえるように書くことが大切です。"魅力的に見えるようにアピール"と聞くと、よく色々と盛りすぎて嘘を書いているように感じるという人がいるのですが、嘘をつけと言っているわけではありません。
嘘をつかずとも、同じ内容を言葉を変えて表現するだけで、読む人にとって魅力的に感じる文章(キャッチーな文章)を作ることができると思います。
例えば...
研究テーマについて説明しようと思った時に、(私の場合は老化の研究がしたいので)
1)〜〜〜という論文を読んで、老化研究に興味を持ち、大学院で老化研究をしたいと考えるようになった。具体的には〜〜〜に着目をして研究をしていきたい。
と書くこともできますが、
2)日本をはじめとして、世界的に高齢化が進む現代において、人々がより健康で長生きのできる社会の実現というのは国際的な重要課題であると考える。加齢を制御している細胞メカニズムを明らかにし、老化の進行を遅らせたり、老化に伴う劣化を可逆的に元に戻したりすることを目的とする老化研究に興味を持ち、大学院でその研究をしたいと考えるようになった。具体的には〜〜〜に着目をして研究をしていきたい。そのため、この課題に老化研究を通して取り組む中で、〜〜〜に貢献したい。
というような形で、どうしてその研究テーマに興味を持ったのかということを一般人にも伝わるように、そして、その研究が社会的にどのような価値があるのかということも意識すると、読み手側もそのテーマに興味を持ちやすくなると考えられます。
そして、このように読み手を意識した文章を書くということが大事なのは、奨学生に選出されたら財団に学費や生活費を出資してもらうということになるということを考えれば当然だと思います。つまり、ただ頭が良いこと・才能があることなどをアピールするのではなく、財団側が支援したい・応援したいと感じるような書き方をするということが大事になります。そのような文章を書くためには、(最初は難しいかもしれませんが)自分で書いた文章を客観的に読み直し、意味が伝わるかどうか・嫌味がなく周りくどくなく読みやすい文章か、などといった点で見つめ直してみるといいと思います。読んでアドバイスをくれる人がいたらお願いをするのもいいかもしれません。
私の経験では、”読み手を意識した文章を書くということ”が得意だと、就職活動のES、奨学金の申請書、プログラムへの応募等、などのどのような選考において合格しやすいように思います。また、今回の進学のための奨学金の獲得だけでなく、その先の人生においても、研究をしているとgrantに応募する必要があったり、仕事をするにしてもプレゼンをして契約を勝ち取る必要があったりなど、これから先の人生においても読み手・聞き手を意識して書類を作ったり発表をするということは非常に重要なポイントだと思います。
そのような文章の作成やプレゼンは最初から上手くできるものではなく、経験を重ねてだんだんと上手くなるものだと思うので、今まであまり応募書類の作成などをしたことがない人は、これを機に挑戦してみてください。そして、仮に上手くいかなかったとしてもその経験はきっと次に繋げることができると思うし、落ちたからといって才能がないというわけではないので自分自身を否定しないで欲しいと思います。
今回の記事がこれから奨学金に応募しようとしている方の参考になれば幸いです。
今回の記事の内容について、説明の不足している点、質問等があれば、この記事へ直接コメントするか、もしくはコメントをオープンにしたくない場合には当ブログのお問い合わせページ・Twitterからご質問ください。