Life in Berkeley アメリカ大学院留学記

2021年からUCBのPh.D.課程にて研究留学中 <進学準備、研究生活、日常生活を紹介します>

後悔しない進路の選び方 <就職と進学、どちらを選ぶ?>

読者の方の中には大学院進学という意志がまだ決まっておらず、進学と就職とで悩んでいる人もいるでしょうか?かく言う私も、アメリカ大学院進学を目指して高校・大学時代を過ごしていたわけではなく、大学3年時には就職と進学とで色々と悩んだ上で、進学を決心しています。

就職も進学もどちらの選択肢を選んでも間違いはないし、どちらが良いと言うものでもありません。しかし、色々と悩む過程で私自身も色々な人の意見を聞いたりしたので、今回は経験談の一つとして、私自身がどのように就職と進学で悩み、答えを出したのかというプロセスについてお話ししたいと思います。

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進学と就職、どう悩んだ?

これまでにも他の記事でも何回か書いてきたかもしれませんが、私は大学3年時の交換留学中に学部卒業後の進路として就職か進学どちらにするのかを決めることを一つの目標にしていました。

交換留学前の時点では食品科学や栄養学などの人体の健康に関係する学問に興味があったため、それらの分野に関連のある東大の大学院の研究室訪問をいくつかしたり、実際に出願するためには過去問を勉強しなくてはいけないと考え、留学先に過去問を買って持っていったりと、できる限りの準備はしていたと思います。また、ヘルスケア分野に関連のある会社で仕事をすることにも興味があり、ヘルスケア分野を扱っているコンサルタント会社や食品メーカーの就活情報を集めたりもしていました。

そして、留学開始後は、まずはじめに就職という進路について考えるためにボストンキャリアフォーラムという就活イベントに参加しました。実際に複数の会社から内定を頂き、真剣に就職しようかどうか悩んだりもしました。しかし、次の理由から学部卒業時での就職という選択肢を捨てました。

※私の個人的な考えであって、学部卒業後の進路として就職を非難するつもりはありません。実際、私自身Ph.D.取得後の将来がどうなっているかもわからないので話半分に聞いてください。。

進学と就職で悩んだ末に進学を選んだ理由

①研究に真剣に取り組んでみたかった

交換留学の時点ではほとんど研究経験はありませんでしたが、研究ではテスト勉強などとは異なり、自分がどんなに頑張ってもいい結果が出るとは限らないし、答えの知られていないことを追求するというところに研究の面白さを感じていたため、卒業研究レベルで終わりにするのではなく、もっと真剣に取り組んで見たいという気持ちがありました。しかし、学部卒業の時点では研究職の募集はないため、そのまま就職したらほとんど研究というものを知らずに働き出すことになると思いました。そのため、焦って学部卒業後に働き始めなくてもやってみたいことをやれるだけやってからでも就職するのはいいのではないかと考え、進学をしようという決意をしました。

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②学部卒業後に就職できる会社は、進学後にも就職できると考えるから

ボストンキャリアフォーラムで内定をいただいた会社は魅力的な会社もあり、真剣に就職しようか悩みましたが、現時点で内定がいただける会社というのは、将来(進学してから)でも働こうと思えば働けるだろうし、Ph.D.取得後の就職というのは新卒一括採用とは異なり、より自分の強みを生かした働き方ができるだろうと考えました。

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キャリアアップ

 

③専門性を磨きたいから

これは①②と少し共通する点もありますが、科学技術がどんどんと進歩し、これまで人間が行ってきていた仕事がどんどんと人工知能にとって変わられていく現代を生きていくのは、機械にとって変わられることのない人間でなければできない能力を身に付ける/高めるということが大事なのではないかと思います。

私はそのような仕事の一つが研究職だと思っています。もちろん、既に人間の何倍もの速度で試薬を分注したり、全自動解析をするような機械は存在しており、研究と言っても、ルーティンワークのような仕事であれば、近い将来には機械やAIが取って代わるようになると思います。しかし、これまで明らかになっていなかったメカニズムを発見をしたり、新しい商品や技術を生み出すといったクリエイティブな面は高い知識や技術、そして柔軟な発想力が求められるため、どんなに機械が人間に近づいても代えがきかないのではないかと考えます。そのため、これからの時代は実験操作自体は機械が正確に行ったとしても、その結果を解釈したり、次に行うべき実験について考えたりといったプロジェクトを主体的に引っ張っていくのは人間なのではないかと考えます。

私自身は博士課程進学後の進路はまだ決めていませんが、仮に将来研究者にはならなかったとしても、大学院の過程で研究を通して専門性、思考力や問題解決能力、自発的に行動しプロジェクトを率いていく能力等、今後の社会で生きていく上できっと役に立つ経験ができるのではないかと考えています。

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実験ロボット

(④両親が就職を急かさなかった)

これは、私個人の意見というより家庭環境の話ですが、私が就職と進学とで悩んでいる時、両親からは”遅かれ早かれいつかは社会に出て働くのだし、急いで就職しなくていいのでは?今就職しても充分やっていけると思うけど、まだまだ色々できるのにもったいない”という話をされました。"もったいない"かどうかはその人の考え方次第だと思いますが、少なくとも景気がいいとはいえない世の中で子供が安定した職につくことを求める親が多い中、このような考え方をし、私の進学を後押しして支えてくれる家族がいたことも理由の一つだと思います。

 

これらの理由から、私は学部卒業後の進路として就職ではなく進学をしようと決意しました。

進路選択について今思うこと

このように書くと、”みんなが真剣に就活をしている中で就職と進学とで迷いながら就活をしたなんて”と言われるか、もしくは”わざわざ就活をしなくても悩めたのでは?”という意見もあるかと思います。しかし、私は決して冷やかしのつもりで就活をしにいったわけではなく、就職・進学どちらの選択肢を選ぶにせよ、そもそも就職先がない限り(=内定が取れない限り)悩むこともできないと考えていました。

ボストンキャリアフォーラムでの就活は、日本で一般的に行われている時間のかかる選考プロセスを簡略化したようなもので、本格的な就活をしたとはいえないかもしれません。しかし、進学一本にいきなり絞るのではなく、考えられる選択肢を全て熟考してから、自分がその時一番納得いく選択肢を選んだことで、この先長いPh.D.課程の中で自分のこれまでの人生選択を振り返った時にもきっと自信を持って選択した道を歩めると思っています。そして、仮にこの先思っていたこととは違う方向に進んだとしても、その時できるベストを尽くして下した決断なのだから後悔のしようがないと思っています。

また、研究業績や専門性を評価する大学院卒業後の就職活動とは異なり、新卒一括採用の就職活動というのは、学生は大学生活での活動等での経験/それを通して考えたことをプレゼンし、会社側がそれを聞いてそれまでの個人の思考力・生き方・人間性・努力等を評価し、ポテンシャルを買って内定を出すものだと私自身は考えています。そのため、最終的には選択しませんでしたが、自分が希望していた会社から内定を得たという結果は、自分の学部時代そしてそれ以前より色々なことに興味を持ち、挑戦し、考えてきたことを客観的に評価していただいた結果だと捉えており、自信につながっているため、無駄な遠回りをしたとは思っていません。

アメリカ大学院進学を意識し始めたタイミング

最後に、今回の記事では就職と進学で悩み、どのようなプロセスで進学を選択したのかという話をしましたが、アメリカの大学院に進学すると決まってから、その報告をする度によく聞かれた質問の1つに"なぜ日本じゃなくてアメリカの大学院なの?"という質問があります。

海外に行かなくても日本でも十分に研究できる環境があるのではないか、日本で生まれ育ったのだし、家族や友人がいる日本を離れてまでどうしてアメリカに行くのかということなど、気になることが多いかと思います。

そこで、次回は進学をすると選んだ上で、なぜアメリカの大学院に行きたいと思ったのかを紹介する予定でいます。また、日本とアメリカの大学院博士課程の違いも紹介するので、もしこの記事を読んでいる人の中に、日本で進学するか、海外に進学するかで悩んでいる人がいれば、このような考え方もあるんだというように参考になるのではないかと思います。